🥣 Briefing
ブランド価値と「時間」の関係
コンシューマー領域のコンサルタント兼投資家であるDan Hockenmaierが、自身のブログでブランドの価値を形成する「時間」について解説している。
彼は記事のなかで、時間軸を「会社の歴史」と「産業の歴史」の二つに分けて紹介している。
IT業界のように技術革新によって新しく生まれた産業は、製品やサービスをよりよいものを、より安く、より便利に提供することで競争している。しかし徐々にその技術が一般化することによって機能による差別化は難しくなり、ブランドイメージが「選ぶ理由」になっていく。今、Louis VuittonのバッグやBud Lightのビールが選ばれるのは、機能が他のブランドより優れているからではなく、そのブランドを選んだときのイメージがよいからだ。
そのため、産業自体の歴史の長さによって、企業の歴史を伸ばす(=競争を勝ち抜き、顧客に選ばれる)ための戦略も変わってくる。
古い産業の場合は自分たちのブランドに合ったメッセージを発信しつづけることで、顧客が想起しやすいブランドをつくることができる。一方で新しい産業の場合は、まず顧客に与える価値の最大化を目指すべきだとHockenmaierは主張している。
なお彼によれば、それぞれの「歴史の長さ」は、企業の場合は何十年、産業の場合は何世紀の単位で考えなければならないとも書いている。この定義をもとに考えると、D2Cを含む多くのブランドは「古い産業 / 新しいブランド(Old industries, young companies)」となり、他のブランドと差別化できるだけの製品やブランドの特徴が必要ということになる。
新興ブランドはマーケティングよりも製品に注力すべきという主張の一方で、テレビCMやインフルエンサーマーケティングが不要なわけではないとも彼は書いている。ただし、多くの企業が費用対効果を意識していないことが問題であり、効果がでるまでに長い時間がかかるとしても、きちんと投資に対するリターンを設定し、分析することが重要だという。
ブランディングやマーケティングの事例を参考にする際は、こうした観点から自分たちと似た立ち位置のブランドを選ぶことも重要と言えるだろう。
中国人TikTokerたちがアメリカ向けのライブコマースに力を入れ始めている背景
中国人Tiktokerが国外の消費者向けにライブコマースを配信し始めている。ライブコマース大国と呼ばれる中国は国内の市場が今年の末に6760億ドルに達すると見込まれているほど巨大な市場だが、アメリカでも2026年までに680億ドルの規模になると予想されるなど、成長が期待されてきた。しかしそんな期待に反して、中国以外の国ではまだライブコマースがそれほど普及していない現実がある。2019年にはAmazonとFacebookがライブコマース事業から撤退するなど、機能自体をシャットダウンするサービスも出てきた。
そんななか、TikTokは2022年からライブコマース機能のテストを開始し、アメリカやインドネシア、ベトナム、シンガポールといった国で、配信者自身がマーチャント登録をすればライブコマース機能を使えるようになった。これによって増加しているのが、アメリカ向けにライブコマースを行う中国人TikTokerだ。
米中の政治的な緊張からTikTokがアメリカ国内で使用禁止となるリスクを孕んでいるものの、アメリカでTikTokの人気が高まっているだけでなく、中国のライブコマース市場が飽和していることもあり、ブルーオーシャンであるアメリカ市場を開拓する中国人配信者たちが増加している。さらにアメリカの方が中国国内よりも高い値段で販売でき、マージンを多くとれるのも中国人配信者にとっては魅力のようだ。
しかも競争の激しい市場にいる中国人配信者は、ライブコマースでモノを売るためのテクニックを熟知している。例えば「lucky scoop」と呼ばれる手法は、ライブ配信中に消費者が商品を注文すると、大量のカラーストーンのなかからリアルタイムで容器1杯分のストーンを掬い、その内容を紹介するもので、このパフォーマンスの際に配信者が購入者の名前を呼んだり、掬ったストーンの中身を紹介したりする。この手法は中国の消費者に限らず、アメリカの30代の女性消費者もハマったという。彼女によると「配信者とのコミュニケーションや自分にあったものに出会う可能性に楽しみを感じる」そうだ。この手法は視聴者の射倖心を煽るという理由で今年のはじめにTikTokによって禁止されたが、いまだに使っている配信者も多い。中国の配信者の多くは具体的な手法を開示していないものの、このように思わず買いたくなるライブコマースのTipsをそれぞれが持っている。
FacebookやAmazonのライブコマース機能の失敗は、まだあまりライブコマースに慣れていないアメリカの配信者が配信する前提で設計されていたのも理由のひとつだと考えると、今回ライブコマースを熟知した中国人配信者がTikTokを通してアメリカ市場に進出してくることで、アメリカにおけるライブコマース市場が活性化される可能性もありそうだ。
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いよいよ今週開催!NY出張報告会
今週8月9日(水)「NY出張報告会 by CEREAL TALK」を開催します。
現地のD2Cブランドやリテールテック系のファウンダー、VCとの話から感じたことはもちろん、今回はNYで開催されるリテール系のカンファレンス「GROW」にも参加予定なので、そこから得た情報もあわせて紹介できればと思っています。さらに、スペシャルゲストとして、江原 理恵さんにもご登壇予定です。詳しくはイベントページをご覧ください!
皆さんにお会いできること楽しみにしています。
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