#68 ラグジュアリーマーケットがベトナムに進出している理由
「RFID」が可能にする、最高に快適なフィッティングルーム、NYのリテールに学ぶ、サスティナブルとどう向き合うか 田原 美穂さんに聞く、D2CドリンクTaikaとWeb3コミュニティFWBのコラボ商品
🥣 Briefing
ラグジュアリーマーケットがベトナムに進出している理由
GUCCIは4月にベトナムのホーチミンでオペラハウスを占拠したファッションイベントを開催。『BoF』では、ベトナムが今回のようなイベントの開催地に選ばれたアジアで数少ない国の一つで、現地の業界関係者によるとGUCCIがベトナムを選んだことで今後数ヶ月、数年のうちに他のブランドからの投資が拡大することが予想されるとのこと。その理由は、ベトナムの富裕層の割合が他の東南アジアの国よりも急速に成長すると予測されていることと2020年のベトナム投資法の改正により、ビジネス環境が改善され、より確実なものになったこと。投資家は、事業内容がネガティブリストに含まれていない限り、外国人による所有が容易であること、また、競合国が要求する最低資本金と比較して期待値が高いことやベトナム人が取締役になる必要がなく、外国人がオーナーになれるというのがメリット。現地の規制当局が要求するジョイントベンチャー構造から、より実用的なアプローチへと移行しており、海外ブランドは投資先としてのベトナムに確信と安心感を持つようになっている。
1986年に「ドイモイ」と呼ばれる経済改革政策が開始されて以来、ベトナムは世界最貧国のひとつから中所得国へと成長を遂げた。極端な所得格差はあるが、ベトナムではここ数年、中産階級の増加が見られ、ラグジュアリー品の消費者層として当てはまる人が増えたという。成長率でみると、パンデミック前のタイの富裕層人口(32,303人)はベトナム(20,645人)を上回っていたが、2020年から2025年にかけてのベトナムの富裕層の成長率(32%)は、タイ(16%)のほぼ2倍になるという予想も。
しかし、一定額を超えると違法となるにもかかわらず、手持ちのラグジュアリー品を転売するグレーマーケットが大きいという側面も持ち合わせているベトナム。
GUCCIが今回開催したイベントから、他ブランドがどのタイミングで何をするのかは注目していたい。
「RFID」が可能にする、最高に快適なフィッティングルーム
先週紹介したホスピタリティ関連の話題のように、リアルな場をいかに活用できるかがブランド企業にとって今後の命題になっている。今週はBoFとマッキンゼーが共同で発行したレポート『The State of Fashion: Technology』の抜粋記事から、革新技術「RFID」を用いた斬新な店舗体験を紹介したい。
まずRFIDとは、非接触かつ遠隔で製品を識別できるテクノロジーのこと。棚卸しの手間が大幅解消されるなど在庫管理に革命を起こした他、たとえばユニクロでは、2018年頃から全ての製品にRFID専用のタグが付けられており、手持ちのスキャナでコードを直接読み取るのではなく、置くだけで合計金額が瞬時に分かるという同社のレジシステムは、この技術の賜物だ。
このすでに十分すごいRFIDを応用した、新たな試着体験が面白い。H&Mのグループブランド「COS」の一部米国店舗では、試着室の鏡が持ち込まれた商品のRFIDタグを識別し、その場でその商品の他のサイズやカラーを外のスタッフにリクエストできる。さらには試着室内で購入まで完了できてしまうというから驚きだ。他にもシャネルのパリ店舗では、商品タグを読み取ると、その製品情報とともにランウェイで着用された際のムービーが鏡に表示される。
盛り上がるRFIDだが、導入コストを理由に普及が進まないなどの課題もあった。しかしマッキンゼーによると、ここ10年で専用タグの価格は約80%まで低下し、なおかつ読み取り精度と、可能な距離ともに大幅な改善をしている。これもCOSやシャネルのような新たな活用法が見出された一因と言えよう。
これまで在庫管理のような店舗側のオペレーション改善の文脈で語られることの多かったRFIDは、顧客のショッピング体験でも頭角を見せ始めている。1つだけ心配なのは、快適になりすぎたフィッティングルームに一度踏み入ったお客様は、いったい何時間後に出てくるのかというところだけ。
🎙 Podcast
NYのリテールに学ぶ、サスティナブルとどう向き合うか 田原 美穂さんに聞く
今回は、NY出張中に収録した特別回です!NY在住のサステナビリティコンサルタント田原美穂さん(@miho_tabaru)をゲストに迎え、 D2Cブランドの店舗開設から運営を手掛ける注目スタートアップから、ファッション法(Fashion Act) やカーボンオフセットの問題などについて一緒にディスカッションしました。
✏️ View
D2CドリンクTaikaとWeb3コミュニティFWBのコラボ商品
D2Cコーヒーブランドとして人気なTaikaが新しいイェルバ・マテ茶をWeb3コミュニティとFriends With Benefits(FWB)と共同開発。数名のFWBメンバーとTaikaチームが二つのマテ茶の試作品を開発したが、どの試作品を商品化するのを決めるのは投票で決まる。投票権及び試作品を試すにはTaikaのNFTを所有しなければいけない。400個のNFTが発行されたが、そのNFTを所有しているとサンプルケースが配送されるだけではなく、今後そのドリンクを購入するときに15%のディスカウントをもらえるようなり、さらにマテ茶のプロジェクトグループに入れるなどの特典が提供される。もちろんTaikaとしてはわざわざWeb3要素を取り組まなくてもベータテストするメンバーシッププログラムを作れたはずだが、FWBと提携したのは今のカルチャートレンドに根付くこと、FWBメンバーが買ってくれるコアファンがつくからなどの理由かと思われる。その代わりにFWBはそのドリンクの18%の利益をもらう仕組みとなっている。上手くコア顧客となりそうな事業と連携して同じアップサイドを共有しながら共同開発する仕組みは今後も増えるかもしれない。
Editor's View
記事にも書いてあって過去のCEREAL TALKポッドキャストでも話したが、フットウェアブランドがSTEPNとコラボしたり、D2C企業としてはWeb3コミュニティは大きなチャンスとなる。コラボするだけでそこのコミュニティの一定層のメンバーは商品を購入してくれる可能性があり、良いプロダクトを作った場合は他のコミュニティからの依頼も増えるかもしれない。特にWeb3企業はグローバルなファンを持つことが多いから、日本ブランドも今まで以上に接しやすくなっているはず。ブランドとして気をつけないといけないのは、勝手にコラボをするなど、コミュニティやIPを汚していると見られないようにすること。
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CEREAL TALKでも関わっている土屋鞄製造所とBolt Threads社が開発したキノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材「マイロ(Mylo™️)」を採用した新モデルの展示が、今週木曜日の6月9日から30日まで土屋鞄渋谷店にて期間限定で行われます。ぜひマッシュルームレザーを体験にし来てくださいね。詳細はこちらを御覧ください。