#10 Twitchを使い始めているブランドが増えている
「ミレニアルピンク」時代の終わり、Adidasがどうやって2025年までにD2C売上を50%まで持っていくのか、「サステイナビリティ」はマーケティング戦略か?
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
Twitchを使い始めているブランドが増えている
今まではヘッドフォンブランドやエナジードリンクなどゲームコミュニティに関連性がある企業がライブストリーミング配信サービス「Twitch」を活用してきたが、Twitchの利用率が上がり、ゲームに関連性がない企業も活用しはじめている。2019年では360万人のTwitch配信者がいたのが、2020年では約2倍の690万人まで増加。2021年1月だけで20億時間のコンテンツがTwitch上で消費された。特に直近では、ビューティー系やチェスなど今までとは違う領域のコンテンツも増えている。そんな中、Modern Retailの記事では、コスメブランド「elf」、アルコールブランドの「ホワイトクロー」、レクサスなどがTwitchを活用事例が紹介されている。elfはTwitch配信者のLoserFruitとコラボし、彼女のフォートナイトアバターをelf商品を使って再現した。その配信だけで10万再生回数を達成して、多くのZ世代のファンを獲得できたとelfが語る。一方で、どういう戦略を取るべきか困っているブランドも多い。他にも、Twitchではニッチコミュニティがかなり盛り上がっている。チェス、アニメ、コスプレ、そして直近では車領域も盛り上がっている。レクサスはTwitchコミュニティを活用してカスタマイズされた車を作るキャンペーンなどを実施。そして夜中の配達などを行うお菓子・飲食ブランドも増えている。通常のデリバリーアプリはTwitch配信者が起きている夜中には利用できないので、ウェンディーズ、Chipotleなどは特別にデリバリーアプリと提携して夜中でも食事を提供できるようにしている。
「ミレニアルピンク」時代の終わり
2014年に人気ブログ「Into The Gloss」がミレニアルピンクを活用したコスメブランドGlossierを立ち上げ6年、ミレニアルピンクの時代がようやく終わった。完璧な世界をキュレーションするのが面倒になったZ世代が違うスタイルに走り始めた。その理由としてはトランプ政権やコロナなど多くの世界的危機を生き抜いたZ世代はよりオーセンティック、カジュアル、汚いルックスを好むようになった。Z世代向けのブランドを見るとミレニアルピンクとは対照的なスライムグリーンを活用したり、オープンでインタネットカルチャーとミーム文化をフル活用しているのがわかる。Z世代は二つのノスタルジアを好んでいる。一つは今のミニマリズムとは対照的な「マキシマリズム(maximalism)」。もう一つは生まれる前の時代を恋しくなるノスタルジア。今ではミニマリズムが冷たく、実用的にしか見えないため、セリフフォントや人間性のある温かみを求めている。同時に、ブランドのコミュニケーションも上からではなく、少し皮肉になりながらふざけるバランスが大事になっている。そしてボールドな色合いだけではなく、今のニュースや社会問題に対してスタンスをとってほしいと多くのZ世代が望んでいる。今までの概念を変えるパッケージングが人気になっている。「クリーン」なビューティープロダクトは今まで白のパッケージングで葉っぱが描かれていることが多かったが、その反対方向で明るいピンク、ネオンカラー、ブルーなどを活用して人を惹きつけるのが今の主流になっている。Inn Beauty Project、Starface、Rosen、Topicals、Bubbleはこの代表例だ。
Millennial pink is dead: Unpacking Gen Z’s imperfect, bright and unapologetic aesthetic
Adidasがどうやって2025年までにD2C売上を50%まで持っていくのか
Adidasが投資家向けの発表会の際にD2Cチャネルからの売上を2025年までに全体の50%までにすると発表した。実現するためにAdidasがデータアナリティクス、ロイヤリティプログラム、そして5つの重点カテゴリーにより投資とフォーカスを入れると宣言。実際にNikeとアンダーアーマーも似た戦略を行なっているので、Adidasは遅れてD2C戦略を行なっていることとなる。Adidasがこの戦略を実施するためにプロダクトラインアップおよびデジタル投資が必要と言われている。アメリカでAdidasがNikeにシェアを失っている最大の要素はNikeのスニーカー市場の強さと言われている。2020年では最もアメリカで売れたスニーカーのトップ10のうちAdidasのものはたった一つだった。さらにアスレジャー領域のアパレルの品揃いも少ないので、セレブとのパートナーシップなどでそこのラインアップを増やすのが大事と言われている。さらにデジタル戦略への投資が必要で、2021年には1,000人テック採用を行うとAdidasが発表している。Modernr Retailの記事では、そして今150万人いるロイヤリティプログラムのメンバー数を5億人まで増やしたいと語っているそうだ。そうするためにはNikeやLululemonのようにアプリとサイトなどデジタルアセットと店舗連携がより重要になってくるだろう。
How Adidas is planning for DTC to make up 50% of its revenue by 2025
🎙Episode 05: 従業員のインフルエンサー化
今回は、従業員のインフルエンサープログラムをリリースした米国ドーナツチェーン「ダンキン」などの事例や伴うリスクやプラスな所など話しました。(Apple Podcastの方はこちら)
✏️ View
「サステイナビリティ」はマーケティング戦略か?
サステイナビリティを推し出すブランドが多い中、それが実際の目的ではなくマーケティング戦略になっている傾向がある。今では「サステイナビリティ」、「エシカル」、「オーガーニック」、「トランスペアレント(透明性)」、というバズワードが出回っている中、ユーザーは購入しているプロダクトが本当に環境に良いのか混乱している。SNSを活用して環境問題を解決したい強い意志を見せることが簡単になっているが、多くの会社はただ発言しているだけで、マーケティング要素として活用している。欧州委員会の調査によると42%の会社の環境にやさしいクレームは誇張、嘘、ミスリードしていると語る。H&Mはオーガニックコットンやリサイクルされたポリエステルで服の素材を作っていると発言していたが、それがどうやって環境に役立つのかを説明してなかったことに対して批判を浴び、ノルウェーの消費者庁から「グリーンウォッシング(環境に配慮したと誤魔化すメッセージ)」を行なっていると指摘が入った。
Editor’s Note
環境問題に対してのソリューションは難しい。そもそも「クリーン」なプロダクトを作る際のエネルギーや環境コストが普通のプロダクトを作るより大きいケースもある。そしてファッションでは重要な自己表現の仕方の一種は色んなプロダクトを購入してそれを着て表現することと考えると、ファッションは必ず環境問題に関わる業界となる。そして特に環境問題で課題になっているのはブランド側が責任を感じていないこと。多くのブランドはサステイナブルな取り組みを行なっていると発言したり、「みんなリサイクルしましょう」とキャンペーンを行なっているが、それはただユーザーに課題解決を押し付けているだけになる。ユーザーがリサイクルや環境について配慮をすれば問題が解決するとプラスチック生産企業やブランドがメッセージとして出しているため、今では環境問題の解決が難しく見える。多くの会社は環境に優しくするためにパッケージをリサイクル素材に変更するなど約束するキャンペーンをフィーチャーするが、実際にそれを守っている会社は少ない。今後のソリューションとしては拡大生産者責任みたいなルールや法律が必要になってくる。これはユーザーに求めているリサイクルする責任やコスト負担を企業が持つことにシフトするアイデア。これはブランドというよりはプラスチックメーカーが当てはまるが、実際にブランドも本気でサステイナブルと自社の取り組みを呼びたいのであれば、そのアクションを取っていない時には責任とコストを背負うべきだと思います。——宮武
The sad reality of sustainable fashion: ‘Exaggerated, false, or deceptive’
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