🥣 Briefing
小売業界CEOに求められる役割が複雑化している
昨年末から23年の年始にかけて、アパレルブランドのトップ交代のニュースでもちきりだった。Victoria’s SecretのCEO エイミー・ホーク氏が就任から1年も立たずに辞任、その数日後にはパーソナルなオンラインスタイリング事業を展開するStich Fixはリーダー陣の一新を表明した。また Adidas, Under Armour, Calvin Klein, Puma, Designer Brands 、Levi’s はすべて23年に新しいトップを迎えることを決定している。
これはめずらしい事案だ。経営陣の再編よりも予算の見直しや優先順位づけの変更がなされることが一般的だ。今回このような経営陣の入れ替わりが多いのは、景気低迷の影響を特に受けやすい小売・アパレルブランドが今後の経済状況を乗り切るために動き始めたことが影響している。小売企業のアドバイザーなどを務めるスティーブ・デニス氏はModern Retaiで、この一年で「中間ブランド・リテーラーはマーケットシェアを多く失った。」と指摘する。SHEINは$100Bのバリュエーション、LVMHはテスラよりも高い評価額がついているが、一方でAdidasは4ヶ月にわたり3度も利益警告を出し、Victoria’s Secretは第三期に8.5%の売上を落とした。さらにサプライチェーンの課題を抱えるブランドも多い。
小売関連のコンサルタントを手掛けるSpieckerman Retailのトップは、これからの経営者は「デジタルに強みを持つなど従来とは異なるタイプのリーダーシップが必要」と指摘。かつてのアパレル企業は主に卸売パートナーシップに依存したビジネスモデルだったが、昨今はデジタルを活用したD2Cモデルが爆発的に増加している。そのため「今日のほとんどの小売業者の CEO の議題は、 5 年前とは大きく異なっている。」と、A.T. カーニーのマイケル・ジェンキンス氏は語っている。特にファッションブランドは多くの場合、デザイナーや創業者主導だが、業界の変化が加速しているため、取締役会はより運用的で多様なスキルセットを備えた CEO を必要としている。また、コンサルティング企業Lotis Blueのシェリダン氏はCEOの役割がより複雑になっている現状について、「CEO であることは、峡谷を綱渡りで渡るようなものだが、風は一方向に吹いてくるわけではない」と例えている。経済状況が楽観視できない中で、経営全体を把握しながらリアルとオンライン、インフルエンサーやストーリーテリングなどあらゆる施策に取り組める人材が求められているのであろう。
Why so many apparel retailers are shaking up their C-suites in 2023
アメリカで海藻食品が当たり前になる未来はくるのか?
Pintarestによると昨今、海藻への注目が高まっているという。2020年9月から2022年9月までにPinterest内での「緑藻」の検索数は60%上昇し、海藻スナックレシピの件数が245%上昇した。実は、藻類はエコフレンドリーなスーパーフードだ。環境負荷が圧倒的に低く、健康に良い。
そこで現在、様々な異なるカテゴリーのブランドが海藻を活用した製品を開発している。例えばウェルネスブランドのTh Nue Coは22年11月に、海藻を特徴とした、海の鎮静効果を模した新しい香水「ウォーターセラピー」を販売。また、スキンケアブランドのOseaは海藻をセラムや保湿剤の有効成分として活用し、ドッグフードブランドPetalumaは、マイクロ藻類や昆布などの原材料でできたドッグフードを販売し人気を集めている。
藻類は今後、アメリカ人の食生活により根付いていくのだろうか?昨今海藻にまつわる食品系の新ブランドがアメリカ国内で次々と生まれている。そのうちの一つがUmaroだ。Umaroは赤い海藻を使用した植物ベースのベーコンを生産・販売している。肉のようなおいしさで、レストランへも卸販売中だという。また、子供受けするおいしさと栄養バランスにこだわりをもつスナックブランドSea Monstersはもろこしと海藻をミックスしたパフ(ふわっとしたお菓子)を開発。アメリカらしいサワークリーム味からオニオン、チーズピザ味まで幅広いテイストを展開している。
藻類食品はおいしさの追求という課題もあるが、それに加えて実用的な課題を解決しなければならない。つまり藻類価格を抑えるためのアメリカ国内生産量の増加だ。
Sea Monsters 共同創業者は、アメリカ国内ではまだ藻類の消費量が少ないことが、海藻農家が生まれない要因だと考えている。そんな中、注目すべきは2006年にアメリカで初めて商業海藻農場として作られたAtlantik Sea Farmsだ。海洋ベジバーガーやスムージーとして食べられるようにデザインされた昆布キューブの販売まで手掛ける。この生産場の2022年春の収穫量は20万ポンドにも上ると推測されている。
アメリカで生産された海藻を原料とする食べ物が、アメリカ人のテーブルに当たり前のように並べられる未来はそう遠くはないのかもしれない。
Can these brands make seaweed and algae go mainstream in the U.S.?
👥 Editor’s View
『小売業界CEOに求められる役割が複雑化している』を読んで
様々な業界でミドル層が死んでいっているが、リテール業界も同じ傾向がある。ラグジュアリーブランドは売上を保っていて、インフレなどの影響でTJ MaxxやCostcoなどディスカウントブランドも好調。同時にEC系の上場企業を見ると、売上マルチプルは基本的に0.7倍〜5倍ぐらいのレンジに入っている。Amazonは2倍弱、Warby Parkerは2.6倍、Allbirdsは1.2倍と非常に厳しい環境にいる。そんな中でD2Cスタートアップはどう動くべきなのかは非常に難しい。SHEINも$100Bの時価総額だったのが$64Bのダウンラウンドで調達すると噂されている。去年の売上が$30Bぐらいと言われていたので、2.1倍の売上マルチプルとなる。スタートアップとしてはより早めのエグジット(数百億円)を目指すこと、そして大手リテーラーだとダウンマーケットかアップマーケット化を狙わないといけないのかもしれない。どちらにしろ、デジタル領域に強いクリエイターブランドは短期的にはアドバンテージを持つことになるので、ここがしっかり事業化・チーム化出来れば数年以内にはかなり手強い相手になりそう。── Tetsuro(@tmiyatake1)
『アメリカで海藻食品が当たり前になる未来はくるのか?』を読んで
記事で紹介されてた「ROOTLESS」という海藻を使った栄養食品のビジュアルはまるでチョコレートみたいですよね。他にもノルウェーの海藻ブランド「Lofoten Seaweed」では、Furikake(ふりかけ)を販売しているのですが、パッケージから料理のユースケースも日本とは違って面白い。いつも食べる食料品も文化が異なると、こんな食べ方もあるのか〜と興味深かったです。食べてみたい!──Miki(@mikikusano)
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