#114 Walmartが過去に買収したD2Cブランドを売却している背景
人気アーティストのツアーがファッションに与える影響、UGCを自動的に収集しコミュニティマーケティングを加速させる「Archive」、最新リテールテックニュースまとめ
🥣 Briefing
Walmartが過去に買収したD2Cブランドを売却している背景
Walmartが、これまで買収してきたD2Cブランドの売却を進めている。
Walmartは2016年から2018年の間にBonobosやJet、ModCloth、Bare Necessities、Shoes.com、Moosejaw、EloquiiといったD2Cブランドを次々に買収してきた。しかし2019年から徐々に売却を進め、3億1000万ドルで買収したBonobosを7500万ドルで売却、30億ドルで買収したJetsにいたっては事業をクローズさせるなど、大きな損失を出している。
数字としては失敗に見えるWalmartのD2Cブランドへの投資だが、これらのデジタルネイティブなブランドを買収したことで、WalmartのECとマーケットプレイスが成長したと見る向きもある。実際に、Walmart CEOのDoug McMillonが今年の2月に株主に送った手紙の中で、ECの売上が820億ドルに達し、全体の売上の14%を占めていると報告されている。
こうした事業の売却はD2Cブランドに限ったものではなく、Walmartは数年前からコアビジネスに注力するために事業の整理を行ってきた。日本やイギリス、ブラジルといった海外事業も手放し、アメリカ本国での事業に集中している。D2Cブランドの売却も、こうした流れの一環だと考えることができる。
また、Walmartのようなリテーラーにとっては、直接ブランドを所有するよりもあくまでブランドとはパートナーの関係を保ちながら、自社製品としてはPBに注力した方がより効果的で利益も大きいとふんだのではないかと見る向きもある。
D2C企業の買収からは撤退したWalmartだが、現在は主にフルフィルメント系のテック企業を積極的に買収したり、投資したりしている。2022年にはフルフィルメントのロボット化を行うAlert Innovationを買収し、倉庫の自動化を行うSymboticの株を取得した。Walmartは3年以内に店舗の65%に自動化機能を持たせ、倉庫業務の55%を自動化する予定だという。
こうしたWalmartの動きは、D2CブランドのExitにも影響を与えそうだ。これまでブランドにとって、大手リテーラーへの売却はIPOと並ぶ選択肢のひとつだった。しかしWalmartが立て続けにブランドを売却していることで、他のリテーラーも今後はブランドの買収を渋るようになる可能性は高い。市況の冷え込みによってIPOのハードルも上がっている中、D2CのExit戦略はさらに難しいものになっていきそうだ。
人気アーティストのツアーがファッションに与える影響
テイラー・スウィフトのライブツアー「The Eras Tour」が、ファッション業界にも影響を与えている。Vogue Businessの記事によれば、ライブに参加するファンがこぞってテイラー・スウィフトの過去の衣装を模したコーディネートをSNSにアップし、TikTokでは「#ErasTourOutfits」のハッシュタグをつけた投稿はすでに3億5700万を超えているという。
「コンサートファッション」が盛り上がりを見せているのは、テイラー・スウィフトだけではない。One Directionのハリー・スタイルズやDua Lipaのライブでも、アーティストのスタイルを取り入れ、ドレスアップして参加するファンが増えているという。
これまでアメリカではフェスファッションは注目を集めていたが、この数年はフェスではあまり着飾らず、ラフな格好で参加する有名人も増えた。代わりにそれぞれのアーティストのライブが新たに注目を浴びる場となっている。
この盛り上がりは、アパレルブランドのマーケティングにも影響を与えている。商品名に「スウィフト風」の一言を入れるだけで売れ行きが変わるのはもちろん、ツアーが開催されるエリアでツアーを意識した広告を出せばROIが飛躍的に高まるという。ECだけでなく、レンタルプラットフォームもツアーに参加するファンに向けて、アルバムをイメージしたコーディネートを提案する特集ページを作っている。
また、フェスは週末の数日間しか開催されないのに対して、ライブツアーは数ヶ月かけて行われる。そのため、イベント購入を見込んで発注した商品の売れ行きが芳しくない場合にはディスカウントするなど、柔軟な施策をとりやすい。こうした点も、ファッション業界がライブツアーに注目する理由となっている。
一方で、ライブという一回きりのイベントのために洋服を買う消費スタイルは、サスティナビリティの観点から疑問の声も上がっている。レンタルプラットフォームが成熟してきた今、ファストファッションで消費するのではなく、ライブツアーにあわせてレンタルサービスがポップアップを開催するといった動きが期待されている。
SNSによってイベントにあわせてファッションを楽しむ消費行動が加速するなか、ファッション業界の側も新たな価値の提供スタイルが求められている。
📝 note
UGCを自動的に収集し、コミュニティマーケティングを加速させる「Archive」
SNSは今やマーケティングに欠かせないツールとなった。特に近年では、顧客の投稿に反応したり、自社のSNS投稿にも使わせてもらうなど、双方向のコミュニケーションがより重視されている。しかしストーリーズは24時間で消えてしまうため気づいたときには消えてしまっていたり、いくつものハッシュタグを追い続けるのは負荷が大きかったりと、UGCの活用ハードルは高い。
今回は、こうした課題を解決するべく、二人のマーケターが立ち上げたのが、UGCを自動的に収集し、一覧化するツール「Archive(アーカイブ)」をnoteで徹底解説。
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