#121 急成長中のマイクロインフルエンサープラットフォーム「Kale」
ものづくりの常識まで変えていくTikTokが生み出すトレンドの影響、5000人のZ世代コミュニティを武器に若者向けスキンケア市場を席巻する新興ブランド「Bubble」、最新リテールテックニュースまとめ
🥣 Briefing
急成長中のマイクロインフルエンサープラットフォーム「Kale」
SNS広告やインフルエンサーマーケティングに次ぐマーケティング施策として、マイクロインフルエンサーの活用が注目されている。そのなかでも、ローンチ1年足らずで急成長を遂げ、注目を集めているのがKaleだ。
Kaleを利用しているブランドの商品を購入し、自身のSNSに投稿すると、閲覧数やエンゲージメントに応じてリワードを受け取ることができる。消費者はSNSに投稿することでお小遣いを稼ぐことができ、ブランドにとってはUGCを生み出すだけでなくKaleユーザーの試し買いを促進でき、両者にとってウィンウィンの仕組みだ。この仕組みは、以前Cereal Talkのnoteでも紹介したSwaypayとも近い。
UGCを促進させることで、消費者のリアルな楽しみ方を知り、それらを製品開発やプロモーションに生かすこともできる。たとえば炭酸飲料ブランドのOlipopは、Kaleを活用して、好きなOlipopフレーバーの飲み方を紹介することでキャッシュバックを獲得できる施策を展開した。すると消費者がワイングラスやカクテルグラスにOlipopを注いで飲むというブランドが想定していなかったOlipopの楽しみ方をしていることが判明。この飲み方をOlipopのSNSなどで拡散した結果、Olipopのタグ付きTikToksは2023年2月に40%増加し、第1四半期の収益も50%増加したという。
SNS広告のパフォーマンスが悪化し、インフルエンサーによるPR投稿への信頼も揺らいでいるなか、マイクロインフルエンサーによるUGCの醸成は、今後のD2Cにとってひとつのセオリーとなっていくかもしれない。
ものづくりの常識まで変えていくTikTokが生み出すトレンドの影響
TikTokは今やトレンド発生の中心地となった。アメリカでは法規制も検討されているが、その勢いは衰えることなく、ブランドにとっても消費トレンドを知る上で無視できない存在になりつつある。
さらに、最近ではTikTok発のトレンドがものづくりにも影響を与えはじめている。
たとえばメキシカンフードチェーンのチポトレは、人気TikTokerのKeith & Alexisが「裏メニュー」として紹介したオリジナルカスタマイズを、公式メニューとして提供することを発表した。2022年12月に投稿された2人のカスタマイズ内容はあっというまにTikTokで話題となり、真似して注文する人が続出。しかし工程が複雑なため提供に時間がかかり、一部の店舗では提供を断るケースも出てきたことで、顧客から不満の声が上がっていた。そこで2023年3月に正式にメニューとして加えることで、効率的に提供できる環境を整えた。
TikTokで生まれたトレンドを製品開発に生かす動きは、コスメや食品、ファッションの領域にも広がっている。Tarte Cosmeticsは肌にのせた際に色が変わるコスメがTikTokで流行っていることにいち早く気づき、肌のpH値によって色が変わるリップとチークを開発した。通常は1年はかかる製品開発を3ヶ月に短縮し、早々に販売を開始したことで、初期ロットは4週間で売り切れたという。
シェフのVeronica Shawが作った「ピンクソース」は、TikTokから人気に火がつき、最終的に大手企業によって商品化された。ドラゴンフルーツを使ってピンクに着色したドレッシングはあっというまに話題となったが、シェフ個人の販売には限界があり、食品会社のDave’s Gourmetが製造販売を引き受けることになった。こちらも通常は1年はかかるところを3ヶ月で製品化し、アメリカ中の小売店に卸して人気を博した。
しかし、TikTokのトレンドはあっというまに盛り上がる一方で、廃れるのも早い。常に次のトレンドを追いかけなければならず、タイミングを誤ると膨大な在庫を抱えるリスクもある。
ファストファッションブランドのEdicatedは、独自のテクノロジーによってTikTokのトレンドをキャッチアップすることで、月に150以上のスタイルを市場に投入している。H&MやZARAといったファストファッションは製品化まで数週間かかっていたが、EdicatedやSHEINのような次世代ファストファッションブランドは、トレンドをキャッチしてから数日で製品化をしてしまう。これらのブランドはトレンドにあわせて次々と製品をつくり販売することで、膨大な廃棄を生み出す問題もはらんでいる。
TikTokが生み出すトレンドの影響力が高まることで、望むと望まざるとに関わらず、ものづくりの常識も変化しつつある。「トレンド」との向き合い方は、今後のブランドにとってひとつの課題となっていきそうだ。
🎙 Podcast
📝 note
5000人のZ世代コミュニティを武器に若者向けスキンケア市場を席巻する新興ブランド「Bubble」
2020年に立ち上がったばかりのスキンケアブランド「Bubble(バブル)」。今回は、Bubbleの成長ストーリーと活用しているテックスタック10つを詳しく解説。
5000人のZ世代コミュニティを武器に若者向けスキンケア市場を席巻する新興ブランド「Bubble」|CEREAL TALK(シリアルトーク)
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