#123 次に投資家の注目を集めるビューティーブランドは?
NY出張報告会 by CEREAL TALK開催、Sephoraの存在はビューティー業界をどう変えたか?、最新リテールテックニュースまとめ
🎉 Event
ニュースレター先行でお知らせしていたニューヨーク出張報告会のイベントページを公開しました!
現地のD2Cブランドやリテールテック系のファウンダー、VCとの話から感じたことはもちろん、今回はNYで開催されるリテール系のカンファレンス「GROW」にも参加予定なので、そこから得た情報もあわせて紹介できればと思っています。詳しくはイベントページをご覧ください
さらに、スペシャルゲストとして、江原 理恵さんにも登壇予定です。
イベント詳細
日時:8/9(水)19時〜
場所:株式会社FABRIC TOKYO オフィス(Googleマップ)
参加費:3,000円
定員:50人程度
ゲスト
江原 理恵(@rie_rev)
証券会社、コンシューマー向けのサービスを投資対象としたベンチャーキャピタル2社を経て、RE株式会社を設立。草花をテーマにした様々なコミュニケーションプロダクトを制作する傍ら、インターネットサービスとリンクしたオフィスデザインやウェブサービス・アプリのディレクションを行うなど、デジタルとリアルを統合させたビジネスデザインに取り組む。アメリカで最先端のコンシューマービジネスをリサーチしながらコンサルタントとして活動。起業家の夫と国際結婚してサンフランシスコに移住し、現在はニューヨーク在住。
🥣 Briefing
次に投資家の注目を集めるビューティーブランドは?
ビューティー業界が活況を取り戻している。Euromonitor Internationalの調査によると、2022年に5460億ドルだった市場規模は2025年には500億増加し、5960億ドルになると見られている。
しかし投資やM&Aの面で見ると、大企業が急成長していたD2Cを次々と買収してきたこの3年に比べると、M&Aの件数が減少傾向にあるとVougue Businessは報じている。
コンサルティングファーム・Kearneyのシニアマネージャーによれば、2021年には240件と見積もられていたM&Aの件数は、2022年には200件にまで減少した。さらに今年の1月には、インフルエンサーマーケティングによって急成長してきたMorpheの親会社・Forma Brandsが22億ドルを調達してからたった3年で倒産するという衝撃的なニュースも飛び込んできた。こうした流れから、M&Aの件数はますます減少し、買収対象としもトレンドを抑えて急成長している企業よりも、すでに安定した収益を出している堅実な企業が選ばれていくだろうと予想されている。
その一方で、投資先として期待を集めている企業も多々ある。Augustinus Bader、Glow Recipe、K18、Supergoop、Malin & Goetz、Sisley、Summer Fridays、Chapstick、Madison Reedといったブランドは、業界内でも魅力的な投資先として語られている。 こうしたブランドの共通点は、ブランドを代表する「ヒーロープロダクト」が確立していることだ。特に最近の「de-influencing(買うべきでないものを伝える)」や「corecore(内省的であること)」の流れを反映し、商品数は少なくとも本当にいい商品だけに注力するブランドが人気を集めている。
さらに、若い消費者たちは従来の表面的な謳い文句ではなく、裏付けのある効能を提示するブランドに惹かれはじめている。そのため、バイオテックや自然由来の成分を使ったブランドが支持を集めているだけでなく、顧客一人一人の肌質や悩みにあわせたパーソナライズにもさらに注目が集まっている。
こうしたM&A環境の変化によって、買収する側の企業も、儲けを前提とした金融系の企業ではなく、自社のポートフォリオを強化したいビューティー系の大企業がメインとなりつつある。10年後に元値の何倍で売れるかを計算して買収していく企業よりも、シナジーを出しながら長い目で共に成長していこうとする企業によって買収されるようになってきているのは、業界にとっては健全な傾向かもしれないとVogue Businessは提示している。
美容業界のみならず、D2C全体のバブルがはじけたことで投資規模は縮小傾向にあるものの、その分より本質に注力するブランドが増え、健全なディールへと繋がっていくことを期待したい。
Sephoraの存在はビューティー業界をどう変えたか?
今やTmallに次ぐ、世界第2位の化粧品リテーラー・Sephora。その歴史は、1969年にフランスでオープンした香水店にまで遡る。フランス最大規模の香水店となった同社がLVMHに買収されたのは1997年のこと。その翌年にアメリカに進出し、化粧品の販売の仕方、さらには小売りのあり方にまで変革を起こし続けてきた。
当時Sephoraの新規性として評価されたのが、高級ラインの化粧品をセルフサービスで気軽に買えるようにしたことだ。当時、高級化粧品の80%以上がデパートで販売されていたが、若者層はもっと気軽に試したり購入したりできる場所がほしいと不満を抱いていた。そこでSephoraは高級化粧品のキュレーションストアとして店舗をオープン。今では、デパートのシェアは19%にまで低下している。
有名な高級ブランドだけでなく、新興ブランドも積極的に取り扱うことで、アクセラレーターとして支持されているのもSephoraの強みのひとつだ。CEO自ら新興ブランドの創業者に会いに行き、次々と有望なブランドを発掘。消費者にとっても、まだ知らないユニークなアイテムやブランドと出会える場として支持されてきた。CEOによれば、競合であるUlta Beautyでヒットしたブランドの90%以上は、Sephoraが取り扱いをはじめたことで人気が出たものだという。
また、様々なブランドをとりあつかうキュレーションストアならではの取り組みもSephoraの成功の要因の一つだ。例えば、結婚式やプロムなどの特別なイベントに特化したメイクアップサービスは、ニッチなブランドを複数取り扱いっているからこそ提供できるもの。その他にも、AIを活用して肌の色にあったファンデーションを無料診断してくれるサービス「ColorIQ」を2012年から提供しており、今では週に75,000セッション、年間400万セッションを記録するほどの人気を博している。さらに、LGBTQを支援するキャンペーンや、棚の15%以上を黒人創業者のブランドに使う「15 Percent Pledge」など、社会課題にも積極的に関与し、若者層からの支持を集めている。
こうしたひとつひとつの取り組みが顧客にとって信頼へとつながり、Sephoraのブランドを強くしているとCEOは語る。一方で、Sephoraの新規客の80%は実店舗で獲得していることから、2021年には老舗百貨店のKohl’sと契約し、今年中にインストアショップを900店舗にまで拡大するなど、店舗数の増加にも力をいれている。さらに、オムニチャネルや店舗体験の向上にもさらに注力していきたいとCEOは語っている。ビューティー業界に変革を起こし続けてきたSephoraの今後の戦略にも、期待が高まる。