#14 NFTブームがラグジュアリーブランドにも到来
ビューティーブランドから人気のプライベートチャットツール、ユーザーは環境に優しいECパッケージを求めている、The Honest Company上場、バーチャルファッションの限界はどこにあるのか?
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
NFTブームがラグジュアリーブランドにも到来
GucciがNFT化された商品を出すのは「時間の問題」と『Vogue Business』が語る中、複数のラグジュアリーブランドがNFT化された商品を近々ローンチすると言われている。過去のECトレンドに乗るのが遅かったことを理解したラグジュアリーブランドは、ブロックチェーンなど新しい技術により関心を持ち始めている。ゲームで購入できる「スキン(キャラクターの服やアイテム)」を既に開発していたブランドも多かったので、NFTを活用することにより限定商品を作れて、よりリアルなファッションに近づけられることを魅力として感じているようだ。今まではユニークなファッションアイテムしかなかったが、今後はより利便性のある、プレミアム感がある商品が出てくると予想されている。例えば、NFT化されたデジタルファッションアイテムを作る「neuno」は、今現在5社のラグジュアリーファッションブランドと提携。Neunoなどを通して販売すると仮想通貨ではなくクレジットカードにて購入ができるので、ユーザーの購入ハードルも下がる。
今現在二つのタイプのNFTファッションアイテムが存在する。一つはリアルのアイテム・服をデジタル再現したもの。オンラインリテーラー「Clothia」は一品物のリアルなドレスとデジタル再現したNFT化されたドレスを販売している。そしてリアルな商品よりデジタル版を安く販売してより広い層にラグジュアリーアイテムを届ける戦略をとるブランドもいる。二つ目のタイプは、デジタルにしか存在しないアイテム。デジタルファッションハウス「The Fabricant」は燃えているデジタル靴を販売した。リアルな世界ではありえないデジタルファッションを作るのが面白い。よりイマーシブな世界とインターネットが発展している中、どのファッションブランドもバーチャル戦略が必要となる。今の若者層からすると、学校に行く格好とゲーム内でのアバターの格好が同じぐらい重要な自己表現を場所となっているのだ。
ビューティーブランドから人気のプライベートチャットツール
コロナ前から様々なブランドは顧客専用のプライベートコミュニティをFacebookやInstagramなどで試していたが、コロナ期間中はさらに強いコミュニティを求めるユーザーが増えたため、多くのブランドがチャットツールをを活用し始めている。女優のグウィネス・パルトローがスタートしたブランド「Goop」のオンラインサミットでは、今年は参加者同士がコミュニケーションを取れるようにSlackチャネルを活用。イベント参加者1,100人は、Slackチャネル上で登壇に合わせてのQ&Aセッションやプロダクトについての説明会などが行われた。Slackは、仕事場のツール、そしてFacebookはより高い年齢層のオーディエンスとして見られる中、Z世代にフォーカスしたビューティーブランドの「Geenie」や日焼け止めブランド「Everyday Humans」などスタートアップが使ってるのは、「Geneva」だ。『Glossy』によると、Geenieは、Genevaを活用してビューティー系の話だけではなく、今起きているニュースのディスカッションも設けているそうだ。Genevaは、2年前にCBDドリンクの「Recess」の創業者が立ち上げたサービスで、Slackと似た機能を提供しながらよりソーシャルな環境を持ち味としている。複数のビューティーブランドがGenevaを活用している中、Genevaは各コミュニティ内にコマース機能の追加も検討している。
Beauty brands tap into private group messaging on Slack and Geneva
ユーザーは環境に優しいECパッケージを求めている
EC需要が上がるとともに、無駄なゴミや段ボールが増え続けている。アメリカの2020年末のホリデーシーズンだけで30億個の段ボール箱が配送された。1度しか使えないダンボールなど配送用の箱をより環境に優しいソリューションに変えようとしているスタートアップが増えている。今ではより環境の優しい箱をユーザーも求めている中、数回使える箱やロジ周りの改善を行うことによって、ブランドは環境に優しくするだけではなく、コストカットもできると考えている。例えば折り畳みができる箱を提供する「Boox」はユーザーが再利用もしくはブランドに返品できる仕組みを提供している。ブランドにとってアップフロントでBooxのプラスチックの箱を購入するのは大きな投資。『Modern Retail』によると、「Ren Skincare」はインフルエンサーでBooxの箱を試した結果、人気のあまり一般客にも提供し始めたそう。Boox以外に複数のブランドを集めて一つの箱にまとめて再利用可能なプラスチックなコンテナで配送してくれるOliveなども人気になっている。個々のブランドもどういうパッケージングや配送オプションを行うかがユーザーから指摘され始めているため、そのコストをブランドマーケティングの一貫として考えるブランドも多くなっている。
Startups are trying to make e-commerce packaging more sustainable
🎙 Podcast 08: The Honest Company上場
今回は、最近上場申請をしたジェシカ・アルバが立ち上げた「The Honest Company」やオーツミルク「Oatly」について話しました🥣(Apple Podcastの方はこちら)
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バーチャルファッションの限界はどこにあるのか?
4月にバーチャルファッション企業のRTFKTとThe Fabricantがイヤリング、スニーカー、ドレスなどのコラボコレクションをリリースした。$20から$10,000と幅広い商品価格で3,000人以上がドロップの事前登録を行った。結果として15分以内にコレクションが全て売り切れ状態になった。全商品はデジタル上でしか存在せず、NFT化されたもの。AR体験やDecentralandなどバーチャルサイトでは使えるようになっている。このようにバーチャルファッション市場の需要は増えているものの、まだメインストリームにはなっていない。2月〜3月のNFTブームのピーク時と比べて、今ではNFT化された商品の平均販売価格が70%下がり、アメリカ政府も仮想通貨の需要を見て詐欺防止などの調査を行うと発表。多くの企業はこのNFT市場は短期的なブームなのか、これからは主流になるものなのかを判断しなければいけない。The FabricantもAdidas、Marques Almeidaなどとコラボしているが、毎回上手くいくギャランティーは出来ないと忠告している。
Editor’s Note
今現在はNFT市場はアート市場と同じ風に見るのが正しいと思われる。ほとんどのアート作品は価値がなく、良いもの(文化的に意味合いがあるものや有名アーティストの作品)には多額の価値がつく。NFT市場は2月〜3月にかけて一時的なブームがあり、かなりの取引が行われたが、ほとんどがお金儲けのための投資活動に近しいものだった。よって、ブランドとしてはNFT市場に入り込むには何かしらの理由や目的があるべき。例えばGucciとかは今まで高額な商品を購入できないユーザーに対してAR上でGucciプロダクト・ブランドを試せる機会を与える、マーケティング戦略の一環としてデジタルファッションを取り入れている。自社のクリエイティブさを見せつけるため、バーチャルインフルエンサーとコラボしてみるため、ゲームで若者層から認知を得るための試作などの理由を持って意味あるデジタル商品を作るのが重要になる。ただ、長期的に考えると、どんどんデジタルとフィジカルの世界がマージしていく中で、デジタルとフィジカルの領域を跨ぐブランドの需要が上がってくるのは間違いないと思います。 —— 宮武
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