#15 Sweetgreenが人気ロイヤリティプログラムをシャットダウンしたわけ
サステイナブルじゃない「返品課題」はどう解決する?、急成長するEコマース業界、新たな課題も、ECのソフトウェアトレンド、ヴィクトリアズ・シークレットの衰退、Paradeの時代へ
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
Sweetgreenが人気ロイヤリティプログラムをシャットダウンしたわけ
サラダD2Cブランド「Sweetgreen」は、何年も続けていたロイヤリティプログラムをシャットダウンすることを発表。このプログラムは、$99毎のSweetgreen購入に応じて$9のクレジットをもらえるというもの。『The New Consumer』によると、コストカットによるシャットダウンではなく、新しくパーソナライズ化されたプログラムを再構築するためだった。顧客へのキャッシュのキックバックだけではなく、パーソナライズされたプログラムによって、特定の行動やルーチンを作ることができる。オーダーする頻度、一回の購入額、週の中の特定の日の訪問、特定メニューやトッピングのトライアルなど、色んな要素をトラッキングもできるだろう。Starbucksのリワードプログラムはこの代表例でもあり、ユーザーにチャレンジを与えてクレジットを渡している。例えば、チャレンジとして3つの選択をユーザーに提示する:1つは1週間の間にStarbucksのアイスティーを3回購入すること、2つ目はホットティーを3回購入すること、もしくはスイーツを4回購入すること。これによってStarbucksは毎日のようにユーザーを訪問させて新しい行動の習慣づくりを行っている。そしてアクションを全てトラッキングすれば、よりパーソナライズしたチャレンジを提供できる。今後もこのように新しい行動を作るロイヤリティプログラムが人気になるかもしれない。
急成長するEコマース業界、新たな課題も
コロナウイルスによってEC事業が伸びたのは間違いないが、新しい課題も生まれている。『Common Thread Collective』によると、アメリカでは2019年のEC率の20.2%から1年で27.6%になったが、今後多くの都市でロックダウンが解除されることによって、同じ成長率を期待できないだろう。自粛期間が長かった分、リアルなソーシャル体験の需要が急増していて、それがどれだけネットショッピングに影響するかわからない。そしてさらにオンライン広告の効率がどんどん悪くなっている。今では全体的に売上の20%が広告を活用してユーザー獲得をしていると言われているが、その20%のうちの3分の2はFacebook。そんな重要なポジションにいるFacebookが二つの新たな要素で悪影響される。1つはAppleのiOS 14アップデート。これによってユーザーのセグメンテーションがやりにくくなる。そしてもう一つがクッキーの削除。GDPRから始まり、カリフォルニア、そして後にGoogleなどがクッキーに対してのルールを定めた。さらに業界全体がキャッチアップしている。
また、多くの大手CPG企業はようやくしっかりしたD2C戦略を持ち始めたのも大きな変化だ。卸事業からダイレクトにユーザーとつながることをプライオリティーとしている。Nike、Pepsico、Adidas、Ocean Spray、Unilever、Clorox、Colgateなどが良い事例。大手企業は同じユーザーのアテンションを今までのD2C企業と同じマーケティング戦略と大型予算を抱えることによって、D2C企業をスクイーズアウトできる可能性がある。結局、大手企業は数年にわたって事業を黒字化できるリスクを取れるが、ベンチャー企業はそれが難しい。もちろん、大手企業だけではなく、今では毎日のように新しいブランドが立ち上がっている。Shopifyだと28秒おきに新しいブランドが初売上を作っている。結果として競合が増えて、お互い戦略をコピーし合うと同じプロダクトを売っているようにしか見えない。EC自体はまだまだ可能性があるが、コロナ後に成功するには課題がたくさんあるのは間違いない。
The Tempest & the Tidal Wave: Five Challenges to Ecommerce on the Other Side of COVID
サステイナブルじゃない「返品課題」はどう解決する?
2020年ではコロナの影響でEC率が上がり、同時に返品も増えた。2020年には、オンライン返品は2019年から2倍以上になったと言われている。返品の課題は、主に2つある。1つは金銭的なコスト。返品の配送と返品後の検品などが必要不可欠だ。実際に2018年ではファストファッションブランドのRevolveは、$499Mの売上を達成したが、返品コストが$531Mあったと『Vogue Business』が伝えている。そして、同時に環境コストがかかる。フィジカルな店舗での返品より14%余分なゴミが発生すると言われていて、返品の配送だけで排出する二酸化炭素はかなりある。そのため、最近では多くのブランド、特に低価格の商品を販売しているブランドはROIを考えた結果、返品無しで返金している。『Thingtesting』によると、ThinxやOutdoor Voicesが活用している返品プラットフォーム「Returnly」は、再利用が難しい商品(下着やコスメ)の返品をしなくて良いようにした。マットレス企業だと返品した商品を寄付するブランドが多い。Tuft & Needleは291社のチャリティー企業と提携して、93%の返品された商品を寄付していると言っている。Eight Sleepだと32%のマットレスが寄付され、28%がリサイクルされ、残りは廃棄される。後払い決済サービスAffirmがReturnlyを$300Mで買収し、OptoroやHappy Returnsなども多くのクライアントを獲得できている。さらに返品率を下げるためのソフトウェア企業も出てきている。Wairはよりフィットする服を理解できるソフトウェアを開発している。アパレル業界では50%の返品理由は”フィット感”なので、少しでも改善ができればブランド側としてはかなりコストカットができる。
Returns aren't sustainable, so how are brands working towards a solution?
🎙 Podcast 10: ECのソフトウェアトレンド
今回は、フラクタ河野さん(@TakaKouno)をゲストにお迎えし、Shopifyとの連携や、ヘッドレスコマース、トライアルや返品サービスなどEコマースのソフトウェアトレンドについて話をしました🥣(Apple Podcastの方はこちら)
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ヴィクトリアズ・シークレットの衰退、Paradeの時代へ
2019年10月にローンチしてから、「Parade」は100万枚の下着を販売。最近ではAllbirds、Everlane、eBayなどに投資しているMaveron Venturesがリードで$10M調達した。そして今回の調達から、新商品のローンチも発表。この急成長っぷりとZ世代から支持されているParadeは、ヴィクトリアズ・シークレットの座を覆せるのではないかと言われている。Paradeの初期グロースは、口コミで集まった400人からスタートしたコミュニティドリブンなマーケティングキャンペーンから来ている。マイクロインフルエンサーの活用、パーソナルなメールマーケティング、そしてインクルーシブに見える商品デザインが重要なポイント。Parade CEOのキャミ・テレスさんは、下着の意味合いの再教育と会話を作れることが大事とであり、次世代のブランドは「自己表現」を可能にするのが重要と『BoF』で語っている。そして今では400人の「Parade Friends」が4,000人まで成長した。
Editor’s Note
Paradeは個人的にも注目しているブランド。元ヴィクトリアズ・シークレットのCMO曰く、2年前にはファッション関連のInstagram投稿の4分の1はヴィクトリアズ・シークレットをメンションしていたが、今ではParadeなど新興ブランドの成長によって変化してきている。Third Loveなど他のD2C下着ブランドは自分たちを「アンチヴィクトリアズ・シークレット」とブランディング・ポジショニングしている。「敵」を自分のユーザーに意識付けるのはカルトブランドとしては正しい戦略だが、Paradeの素晴らしいところは、明確にアンチと言わなくてもユーザーがヴィクトリアズ・シークレットに対抗するブランドと理解しているところ。明確に言わないからこそヴィクトリアズ・シークレットのユーザーを勝ち取るマーケティングをせずに、自社のコミュニティにより投資ができる。これはLululemonが「アンチナイキ」と言わずにナイキに対抗しているブランドとしてユーザーが理解したのと同じように見える。今後もParadeはアンチと言わずにどうヴィクトリアズ・シークレットと対抗するのかを楽しみにしている。 —— 宮武
📰 News
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