#24 DTC業界で$1B以上の売却エグジットが少ない理由
キム・カーダシアンの下着ブランドSkimsがアメリカのオリンピックチームに選ばれる意味合い、ファッションブランドへのTikTokのTips、TOYOTAがサポートする移動式のポップアップショップ
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
DTC業界で$1B以上の売却エグジットが少ない理由
ユニリーバがDollar Shave Clubを$1Bで買収してから約5年、未だに異例なエグジットのままだ。コロナの影響でEC率が上がり、レガシーブランドから新しいDTCブランドのマーケットシェアが増えても$1B以上の買収事例がDTC業界では数少ない。『The New Consumer』の記事では、一部の理由はトップティアのDTC企業はVCなどから資金調達が出来ているので、エグジットの必要性を感じていないからであると紹介している。彼らが述べるには、同時に上場(直接上場やSPACも含める)してエグジットするパターンも増えているが、結果はかなり二極化している。Casperは2019年に最後にVCから調達した時価総額が$1.1Bだったのに、今は$350M以下の評価となっている。Him & Hersは2021年1月にSPAC経由で上場したが、今の株価は2月のピークから約半分になっている。Pelotonはコロナの影響で株価が急増したが、最近のリコール問題などで1月の株価から約40%下がっている。
そもそも買収想定できる会社も限られている。テック企業のFacebookやGoogleは興味がないし、最近ではAmazonやWalmartもブランド買収を行っていない。Targetは提携はするが、自社のプライベートレーベルの立ち上げの方に興味を持っていて、ナイキも買収をしない。Shopifyも中立な立場を保つためにブランドを買収していない。どちらかというと、CPG系の大手企業が買収するイメージがあるが、最近各大手CPGリテール企業が自社のDTC事業を検証している中、インフラづくりのためにDTCブランドの買収を行っているように見える。この流れを変える可能性があるとすればHarry's。$1.4Bで売却するはずだったHarry'sはアメリカのFTCに止められ、そのままプライベート企業として残ったが、Harry'sは今積極的に買収する動きに入っている。元々インハウスでブランドのインキュベーションを行なっていたが、Harry's創業メンバーはもう少し大きめなブランド名を買収候補として探していると語っている。Harry'sももしかしたら、複数のブランドを支えられるプラットフォームを作り、大手企業に挑戦できる、マルチブランドで優秀な起業家が集まったDTCスクワッドが誕生するかもしれない。
キム・カーダシアンの下着ブランドSkimsがアメリカのオリンピックチームに選ばれる意味合い
今までラルフ・ローレンなど歴史のあるアメリカ生まれのブランドがアメリカのオリンピック代表チームの服装を作るのが普通だったのが、今回はアメリカ代表の下着ブランドでキム・カーダシアンが設立した「SKIMS」に決まったと『BoF』が報じた。これは非常にアメリカのファッション業界とDTC業界としては大きなターニングポイント。2〜3年前に生まれたデジタルファーストなブランドが今までレガシーブランドしかアクセスできなかった歴史に刻まれる文化的瞬間を勝ち取った。ラルフ・ローレンが何十年もかけて作ってきたことを数年で作れる時代が来ている。これはSKIMSが作ろうとしていて若者層に響いているインクルーシブなブランドがアメリカが世界に表現したいイメージに合うからこそ選ばれたと思われる。もちろんSKIMSの2020年の$145Mの売上はラルフ・ローレンの$6B以上の売上とはかなり遠いし、キム・カーダシアンのようなセレブが作っているブランドでもあるが、DTCブランドが国を代表するところまで来たのは歴史的瞬間でもあるし、これから似たようなことが世界中で行われる可能性がある。
What Kim Kardashian’s Olympics Coup Says About American Fashion
ファッションブランドへのTikTokのTips
2021年1月からファッション関連のTikTok投稿の数が3,031%増えている。ハッシュタグ「#TikTokFashion」の動画だけでも153億再生回数を突破している。今TikTok上でファッションブランドが気になるべきトレンドは4つを『INSIDER』が紹介している。1つはサステイナブルなファッションを取り入れたいユーザーが増えていること。自社商品の製造プロセスを動画で見せるなど、環境問題の意識が若者層の間では高まっている。2つ目に、それとは対照的にファストファッションもいまだに人気。「hauls(購入品紹介)」動画をファストファッションブランドのSHEIN、Fashion Nova、Pretty Little Thingなどがスポンサーすることが多い。3つ目は、ブランド側でハッシュタグチャレンジを作らないこと。逆にユーザーが作るトレンドの「#whatidwear」などにブランドが乗っかる方が良い戦略になっている。そして4つ目は、ラグジュアリーブランドもTikTokでは人気だということ。開封動画はTikTokではかなり人気で、Gucci、Dior、Balenciagaも積極的に動画チャレンジや投稿を行なっている。Gucciは「Gucci Model Challenge」をはじめた。ラグジュアリーブランドでも皮肉で自虐的なコンテンツを受け入れる時代になったのは、ブランド側も今の若者層にアピールしている証拠かもしれない。
🎙 Podcast
#19 ユーザーを理解したカスタマーサポートの重要性
今回は、「カスタマーサポート」をテーマに、有名なカスタマーサポートチームザッポスやペットフードChewyの事例、パーソナライズされた個々のユーザーを理解したCSの重要性など話をしました。
✏ View
TOYOTAがサポートする移動式のポップアップショップ
カルフォルニアのモールにちょっと変わったタイプのポップアップが誕生した。サステイナブルでミニマルなレザー製品やアパレルを販売するCuyana(クイアーナ)が、「Cuyana In Motion」という名の移動型ポップアップを開店。『Bloomberg』によると、この”ポータブルポップアップ”に協力しているのは、なんとトヨタ。R&D部門であるInfoTech LabsのAgile Spaceプログラムという使われてないスペースを移動型の店舗(現地での組み立ては必要)で活用する取り組みの一環。約8つの駐車スペースを活用して、設置・解体には3日かかるそう。
Editor’s Note
ポップアップ市場はアメリカ国内だけで1兆円以上の規模になっているものの、短期間の出店のわりに内装などの費用が高いことが課題であること、そしてコロナの影響でモールが穴だらけであることが背景にあるようです。6月中旬からスタートしており、各都市で1-2ヶ月ほど出店しつつ12月まで周るみたいですが、データや顧客の反応を見ながら次の出店先(ポップアップではなく)の検討も行うようです。写真を見る限りで通常の店舗と遜色なく、どこがどう移動式なのかトレーラーハウスみたいな感じなのかとても気になります。——沼田
Cuyana Fashion Label Takes Traveling Pop-Up Showrooms on the Road
📰 News
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