#27 Z世代はTikTokを活用してGAPを救えるのか?
2021年のECテックスタックの考え方、シリアルD2Cブランド「Magic Spoon」の創業物語、ラグジュアリー帝国LVHMの後継者候補、弱冠29歳のアレクサンドル・アルノーとは何者か?
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
Z世代はTikTokを活用してGAPを救えるのか?
1990年代と2000年代ではどの女優やスターも着ていたGAPが2023年までに350店舗を閉店させると発表した。ただ、『Refinery29』によると、最近ではGAPではポジティブな要素が出てきているらしい。2020年6月にカニエ・ウェストの人気ブランドYeezyと提携しオリジナルコレクションを発表。人気YouTuberのエマ・チェンバレンもInstagram上で古着のGAPパーカーの写真を投稿。その写真だけで400万いいねと1.2万件のコメントがつき、GAP=イケてるブランドとなり始めた。他にも人気TikTokerのローラ・クリントン・ヘイワードは2021年トレンド予測でGAPが人気になると予想。Z世代は2000年代の流行アイテムを蘇らせるのがトレンドになっていて、その中でノスタルジックなルックスがあるGAPのパーカーはDepopなど二次流通アプリでは$200以上の値段になっていた。そんな中、2021年6月末にGAPがビンテージルックスの茶色のパーカーを限定販売した。同時にTikTokと提携して、次にどの色のパーカーをリリースするべきかコンペ・投票を行なった。今後も他のブランドもよりビンテージのルックスやコレクションを出して、1990年代と2000年代のファッションが好きなZ世代の興味を引き寄せる施策を考えると思われる。
2021年のECテックスタックの考え方
EC自動化ソリューションサービスを開発する「alloy」では、これまでのECテックスタックについてブログで紹介している。今まで多くのEC企業は、シンプルなソフトウェアしか必要なかった。オーダーと顧客管理システム、コンテンツ管理システム、そしてサードパーティアプリとの連携などが必要で、2000年台では初代ECソフトウェアが出てきていても、誰もECテックスタックを考えてこなかったのだ。2010年には、これが変わり、ShopifyやBigCommerceなどCMS、オーダー管理、連携出来るシステムなどを統合したECプラットフォームが台頭した。実際に2009年のオンラインリテーラーへのアンケートを見ると、49%がECプラットフォームへ投資すると言っていて、37%がCMSツールなどに投資すると言っていた。これがコロナの影響などがあり、2020年代に入ってアメリカでは優位性を作るためにより高度なECソフトウェアが必要になってきた。2020年代からがECテックスタックを考える年になった。ただFacebook広告やInstagram広告で伸びるのではなく、社内で導入したテクノロジー・ソフトウェアを活用してより優れた体験作りをするのが普通になり始めている。どのツールを選択して、どういう風に活用するかが成長へつながり始めた。そんなECソフトウェアが増えている中で、様々なニッチなソフトウェアを連携させるツールも必要となってきている。
シリアルD2Cブランド「Magic Spoon」の創業物語
シリアルブランド「Magic Spoon」は、実は2度目の起業だったことはご存知だろうか。『Forbes』では、彼らのシリアルアントレプレナーとしての物語を取り上げている。ブラウン大学の学生だったガビ・ルイスとグレッグ・セウィッツは、昆虫にはタンパク質が豊富であることを知り、コオロギを使った食べ物を作り始めた。大学卒業と同時に、Exo社を創業。コオロギをベースにしたプロテインバーを作り、$1.6M調達し、5年後事業売却した。売却後、新しい形で社会にプロテインを提供したいと思った二人はシリアルの領域に入り込むことを決意。半年ほど研究を行い、色んな投資家に微糖でプロテインが含まれているグレインフリー、ケトンフレンドリー、そして競合とは違って、卸ではなくD2C戦略でユーザーにリーチしたいと語った。Magic Spoonはインフルエンサーマーケティングやポッドキャスト広告を積極的に行っていて、若者層にリーチするために人気TikTokerのジョシュ・リチャーズと限定商品をローンチ。もう少し上の年齢層には、人気ポッドキャスト番組「Pod Save America」や「Tim Ferriss Show」に広告を出し、プレミアムシリアルブランドの認知を広げている。
From Cricket Protein To DTC Cereal: How Magic Spoon’s Cofounders Built Instagram’s Favorite Cereal
🎙 Podcast
#21 デザイナーD2Cを支援するLVHM
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ラグジュアリー帝国LVHMの後継者候補、弱冠29歳のアレクサンドル・アルノーとは何者か?
アレクサンドル・アルノーは、創業者ベルナール・アルノーの3番目の子で、5年前、当時24歳でありながら、スーツケースメーカー「リモワ」を買収し、CEOに就任。兄弟はみなグループの経営に関わっており、姉のデルフィーヌ(46歳)はヴィトンの製品担当VP、兄のアントワーヌ(44歳)はベルルッティのCEO、弟のフレデリック(26歳)はタグ・ホイヤーのCEOという布陣。アレクサンドルはそれ以前はマッキンゼーとファンドのKKRで働いており、グループの仕事に正式に携わったことはなかった。伝統的なラグジュアリーの手法にとらわれず、元々のメンバーとのすれ違いや確執はあったものの、CEOに就任後は20%の値上げ、サングラスやバックパックなどのアクセサリの充実、NYのソーホーやベルリンなどのヒップな場所への出店、そして何よりもバズを生むコラボレーションの展開(ヴァージルのOff-Whiteとのコラボは個人的なインスタDMがきっかけ)を行い、プレミアムで実用的・機能的なイメージだったもののカルチャーとの結びつきの弱かったリモワの革新に着手した。
Editor’s Note
リモワ単体の業績は現在開示されてないようですし、コロナもあったので実際のところどう評価されているのかは不明ですが、ここ数年は質実剛健時代のリモワより話題に事欠かなかったのは間違いありません。アレクサンドルさんは伝統的なラグジュアリーブランドの経営に携わった経験は少ないものの、現代のカルチャーを支える中心的なセレブリティとの人脈やデジタルの理解(『Business Insider』の記事では、Digital Whiz=デジタルのエキスパートと表現)、ミレニアルズやGen Zへの共感などが大きな強みになっており、ヴァージルのヴィトンへの招集、Jay-Zのシャンパンブランドの買収、最近までLVMHのチーフデジタルオフィサーを務めたイアン・ロジャース(元Apple Music責任者)の採用に関係していたとか。そんな彼にとって新たな挑戦であり、かつ父親からの次のテストと見られているのが昨年買収したティファニーで、元ヴィトンのベテランとともに今年頭に経営陣に就任。あまり強くないジュエリー部門をグループにとって過去最大の買収とともに強化していく役目を担っているようで、これが成功したら後継者になるのではと言われています。
ティファニーの課題はユーザーの高齢化と平均単価の低下で、売上に占める530ドル以下の製品が45%となっており、ブランド価値が下がっている。そんな中、ブランドのテーマカラーをブルーからイエローに変えて物議を醸したり、ちょうど先週「Not Your Mother’s Tiffany(母親のためのティファニーじゃない)」というキャンペーンを行って若年層にアピールして逆にお母さん世代の反発を生んで炎上したり、さっそく話題を生んでいます。
個人的に感じたのが、グループ全体としてミレニアルズやGen Zなどの若年層=次の消費の主役と彼・彼女らにインフルエンスするセレブリティをかなり意識しており、それ故にアレクサンドルを重用しているのではないかということ。これはLVMHだけでなく、Gucciやバーバリーを始めとして他のメゾンでも感じられる動きで、デジタルネイティブは当たり前で温暖化が進むところまで進んだ世界に生まれて親と同じ過ちを繰り返したくないと考える新世代(中国の若者を含む)をしっかり見ている気がします。引き続きアレクサンドルさんの今後、そして若年層に対するLVMHの取り組みから目が離せません。——沼田
Meet Alexandre Arnault, 29-Year-Old Son of Europe's Richest Billionaire
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