#32 H&Mなど大手小売がリセール事業に本気で挑む理由
ビューティー市場でのアップサイクルトレンドと課題、パーソナライズ体験とデータ活用方法、Adidasの社長候補エリック・リートケが退社、次に目指すサステイナブルなSupremeとは?、【ポッドキャスト】Warby Parker上場 Part2
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
H&Mなど大手小売がリセール事業に本気で挑む理由
今週9月7日に、H&Mがカナダでリセールサイト「H&M Rewear」をローンチ予定。カナダでのパフォーマンス次第で他の国へ展開する予定だが、最近は多くのリテーラーがリセール事業へ入り込んでいる。MadewellはThredUpと提携して古着のMadewellデニムを返すことによってストアクレジットをもらえる取り組みを始めたり、ケリングはリセール企業のVestiaire Collectiveの株を5%取得。イギリスのデパートHarvey NicholsもReflauntとリセールサービスを提供すると発表した。これだけ市場が変わった一部の理由は二次流通の需要がかなり上がったからと『BoF』は伝える。今年はThredUpとPoshmarkが上場し、Z世代向けのリセールサービスDepopは$1.6Bで買収されている。多くのブランドはリセール事業で儲けることはあまり考えてなく、顧客満足度を上げるのとサステイナビリティな取り組みをしているとブランディングしたい理由が多いと言われている。最近だと「サーキュラーファッション」というバズワードを使うブランドも増えたが、本当にリセール事業がそのブランドのカーボンフットプリントを下げるかは二つの要素で決まると言われている。一つは製造量を下げられるか、そして二次流通のロジ周りなどでかかるエネルギーやリソースの度合い。フィンランドのLUT大学の研究によると、素材のリサイクルやファッションレンタルの方が環境には大きなインパクトがあると結論しているが、最終的に重要なのはリセール事業を行う際にはそのインパクトを実際に図ること。多くの課題は製造時に行われるため、もしかしたらリセール事業が本当にポジティブなインパクトを行なったのがわかるのは、リセール売上が一次流通の売上を上回った瞬間かもしれない。
ビューティー市場でのアップサイクルトレンドと課題
香水ブランドSt. Roseの新しい商品開発する際に、創業者のベリンダ・スミスは試しにアップサイクルされた材料を活用した。捨てるはずのキャビネットの木と既に使われた押し花を活用した香水「Vigilante」は賞にノミネートされて、そのトレンドに乗って複数のブランドがアップサイクルされた材料を使い始めていると『BoF』で取り上げられている。スキンケアブランドCircumferenceはアップサイクル材料を活用したクレンザー、Farmacyはアップサイクルされたクレンジングバームなどを販売。元々使い回しがより簡単なファッション業界と違って、コスメやスキンケア商品は使い回しが難しい。そのため、アップサイクルされた商品を作るのに他業界から廃棄物を仕入れないといけない。今現在最もビューティーブランドがアップサイクル材料を活用しているのは飲食業界からだが、まだ飲食業界へのネットワークが少なく、廃棄物のソーシングと材料へ変換するプロセスを一から考えないといけないため、多くのブランドにとってアップサイクルした材料を使うコストがまだ高い。
サステイナビリティがブランドにとって重要になっている今、このようなアップサイクル材料を使ってユーザーにそのプロセスやソース元を可視化することによってブランドポジショニングを強めている会社もいる。そして今後色んなブランドがこの領域で実証実験を行うことによってアップサイクルのプロセスが効率化されることに期待している。
パーソナライズ体験とデータ活用方法
店舗に来店できないユーザーに対してBenefit Cosmeticsは、サイトでバーチャル上でメイクなどを試せる体験を提供し始めたが、これはただオンライン上で店舗体験を再現するためではなく、データ収集のためだった。ユーザーはオンライン上でメイクを試す際に事前にメイクの好みなどを共有するだけではなく、試したメイクの形などもBenefitは収集している。多くのユーザーのデータを統合した結果、よりナチュラルなマーケティングをすることや、よりパーソナライズされた体験を提供できるようになる。Benefitは自社データだけではなく、マーケットリサーチ企業のNPDの情報やGoogle検索データを活用して判断をしている。さらに対象のユーザーをリーチするために、新しいチャネルも試している。ビューティー動画よりゲーム動画を見る女性の方が多いことに気づいたBenefitはゲーミング業界の中でのキャンペーンやユーザーエンゲージメントを考えている。ビューティーブランドのFarmacyは大量のデータを抱えてなかったが、SNS上でのコメント、DM、投稿に対して必ず返信するお陰で毎日DM数が250通を超えていて、毎週数百回レビューされている。熱いコミュニティを作れたからこそほぼリアルタイムで新商品のフィードバックをもらえて、それに合わせてプロダクト開発のスピードを上げている。
✏️View
Adidasの社長候補エリック・リートケが退社、次に目指すサステイナブルなSupremeとは?
2019年にはAdidasの経営者で次期社長になると言われていたエリック・リートケはAdidasのターンアラウンドを実現した重要人物だった。カニエ・ウェストのYeezyブランドやビヨンセとのコラボを実行したが、急遽退職した。今は廃棄ゼロでプラスチックを使わないストリートウェアブランドを作ろうとしている。Adidasだと株主のために$20B以上の売上を作る義務があったので、こう言う新しい取り組みに集中できないため、自分のブランドを立ち上げたと言う。新ブランドの名前は「Unless」で、ブランドのスローガンは「Don't Feel Bad」。最初はTシャツ、シャツ、パーカーなどを作る予定で、ボタンなど全ての素材にプラスチックを使わないのが特徴的となる。エリック・リートケ以外に元Adidasのクリエイティブディレクターのポール・ガウディオや元Quiksilverのマーケティングディレクターなど強い創業チームのため、Connect Venturesが$30Mの時価総額で$7.5Mのラウンドをリードした。排気ゼロを作りたいUnlessからすると、顧客に服を返品させるのか、そして生地を上手いこと処分する手法はまだ定かではない。今現在のサプライチェーンや施設はそのようなことをやっていないため、自社でそのような施設の開発まで検討している。
Editor's View
Allbirds、Sweetgreen、Oatlyなどサステイナビリティ押しのD2Cブランドが上場すると同時に、大手リテールブランドがリセール事業や環境に優しい素材を活用し始めているため、サステイナビリティ自体はよりメインストリームなコンセプトになっている。同時にSupremeなどの影響でストリートウェアもサブカルからメインストリーンへと入り込んでいる。その二つの要素を取り込んだのがUnlessだが、一番難しそうなのはサステイナビリティの要素。Allbirdsなどを見ると、初期は環境問題に対してのブランディングよりプロダクト押しで、徐々に商品が改善されてから環境についてブランディングし始めた。Unlessは初期からこれだけサステイナビリティ押しをしてしまうと、かなり顧客の期待が高まるので、それに応えなければいけない。個人的に気になるのはどう言う形でユーザーに返品のインセンティブ付けをするのか。Unless CEOのエリックさんが言うように、Adidasなど大企業だと出来なかったかもしれないが、客にAdidasみたいな一般層向けのブランドだからこそよりインパクトを及ぼせたかもしれない。サステイナビリティでの最近の個人的な学びとしては、ほとんどがステータスシンボルでしかなく、本当に世界を変えたいのであれば、低価格の商品開発を考えなければいけないこと。——宮武
🎙Podcast
This Week’s Topic: 『Warby Parker IPO!』Part 2
前回に引き続き、メガネD2Cの「Warby Parker」の上場をテーマにお送りしました。今回は、競合比較にアイウェアの大手コングロマリットと他社D2Cブランドとの比較、バリュエーションなどについて話をしました。(Appleの方はこちら)
📰 News
アイスクリームミュージアムが帰って来た、初週で3万チケット販売 - Fortune
Allbirdsの上場申請資料が公開 - CNBC
オーラルケアD2CブランドのQuipが$100M調達を発表 - TechCrunch
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