#36 シリコンバレー企業がファッション雑誌編集者を採用している理由
Robloxがファッション業界の若者層との触れ合い場所になっている、サンプリング用にデジタルファッションを活用するブランドが増えるかもしれない、プチプラコスメ「e.l.f. Cosmetics」のTikTok戦略
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
シリコンバレー企業がファッション雑誌編集者を採用している理由
20年以上ファッション業界で働いていたフランスを代表する女性誌マリ・クレール誌の編集長だったアヤ・カナイがPinterestのHead of Content and Creator Partnershipsとして採用された。2月に雑誌SELFの編集長のキャロリン・キルストラがGoogleに採用され、4月にAllureのファッションディレクターのラージニ・ジャックはSnapchatに引き抜かれた。他にも、Elle Canadaの編集長はTikTokへ、Vogueのクリエイティブディレクターは今はAmazonのHead of Fashionの役職となっている。テック業界がファッション編集者を引き抜いている理由は、編集者としてのストーリーテリング能力やネットワークを評価していると『The Cut』で紹介されている。
特に直近ではテック企業はクリエイターとの関係性を構築するため、そしてよりコマース体験を入れる際にはファッション業界の人たちからインプットを欲しがっているように見える。ファッション編集者としても、テック企業から良い給料だけではなく、株やアップサイドのようなインセンティブが付けられると、転職するのは自然な流れ。結局ファッション誌の編集者たちは自分たちでコンテンツ制作にどれだけ関りたいかによって、ファッション業界に残るかテック業界に行くか決めているかもしれない。
The Devil Wears Allbirds Silicon Valley companies are sucking up all the fashion editors.
Robloxがファッション業界の若者層との触れ合い場所になっている
Robloxでは4,600万人のDAUがいる中で、GucciやVansなど著名ファッションブランドがバーチャル世界に入り込み始めている。Roblox担当者やRoblox投資家いよると、ブランドはRobloxをゲームやゲームプラットフォームとして見るべきではない。今ではRobloxをデジタル生活の中心に置いている人たちもいる中で、そのデジタル生活とどう繋がりを持てるかをブランドは考えるべき。Gucciの2週間のバーチャル世界では2,000万人が訪れて、数十万人が複数商品を購入した。さらにGucciアイテムをRoblox上で購入した際には他のRoblox上のアイテムより平均5時間長くアバターが着ていた。『Vogue Business』によると、Roblox上で良いアイテムを作るためにはRobloxの人気クリエイターのcSapphireやRook Vangaurdと提携。多くのブランドも今後は自社でRobloxアイテムを作るのではなく、既存のクリエイターと一緒に作るのが重要かもしれない。
サンプリング用にデジタルファッションを活用するブランドが増えるかもしれない
ブランドがデジタルファッションに興味を持ち始めている中、特に注目されているのはインフルエンサーとのサンプリング施策が『Vogue Business』で紹介されている。今まではインフルエンサーにサンプルを配送して商品を着てもらっていたが、デジタルファッションを活用すれば大量のサンプルを出す金銭的なコストと環境コストがなくなる。すでに似た施策でデンマークブランドのHan KjøbenhavnはARフィルターを活用してジュエリー商品のローンチをプロモーションした。そして最近Farfetchが大手リテーラーの中で初めてデジタルサンプルを試した。Farfetchは色んなインフルエンサーの写真を集めて、そのインフルエンサーにBalenciaga、Off-White、Dolce & Gabanaなど著名ブランドのデジタルサンプルを着させた。Farfetchはアパレル商品をデジタル化する際にDressXと提携して、アクセサリーのデジタル化はThreediumと提携した。そしてインフルエンサーに対してポーズやデジタルサンプルを着させやすくするための指示・ガイドラインを提供。今後はSnapchatやDressXなどの技術が発展すると、新しい商品をブランドがリリースする際に必ず3D・デジタル化する時代が来るかもしれない。
Influencers are wearing digital versions of physical clothes now
✏️ View
プチプラコスメ「e.l.f. Cosmetics」のTikTok戦略
コロナ期間中にメイク売上は22%下がった中、e.l.f. Cosmeticsのオンライン成長率は100%以上で、全体の売上が年々13%成長を実施。これを実現するためにZ世代に響くTikTokコンテンツ戦略を実行した。e.l.f.はTikTok上で3,300万人以上のフォロワー、累計で900万いいねを達成している。『Tubefilter』では、TikTokがオススメする「Flicker、Flash、Flare」フレームワークを活用したストーリーを紹介している。Flickerコンテンツとは、TikTokトレンドに自社のブランドのテイストを付け加えた簡単に作れる動画。Flashコンテンツは、計画された動画シリーズ。ここではブランドのストーリーやオリジナル性を出すのが大事。e.l.f.はスキンケアルーチンやメイクチュートリアルなどを多く出して、誰でもすぐにe.l.f.動画と分かるようなフォーマットを作った。最後のFlareコンテンツとは、年に数回しかやらない大型キャンペーン。プロダクトローンチ時などに実行するケースが多く、TikTokはハッシュタグチャレンジの作成や大型インフルエンサーとのコラボを通してバズらせるのをオススメしている。e.l.f.は自社の歌「Eyes. Lips. Face. (e.l.f.)」を作り、インフルエンサーなどを活用してメイクルーティン動画でその音声を活用することをお願いした。140万人のTikTokユーザーがその音声を活用していて、音声が人気になりSpotify上で2,300万再生を突破。
Editor's View
TikTokの「Flicker、Flash、Flare」コンテンツ戦略は、ブランドとしてはかなり参考になるはず。上手くトレンドコンテンツ、ブランドをフォーマットを定着させるコンテンツ、そして大型コンテンツを組み合わせるのが大事。そもそもアメリカでは1億人以上のユーザーがいる中で、Z世代は60%以上を閉めていると言われているTikTokでは、ブランドの平均オーガニックリーチは118%で平均エンゲージメント率が8%。これはInstagramなど競合より遥かに高い数字。TikTokだと100人のフォロワーがいれば118人にリーチできて、Instagramだと大体5人にしかリーチできないので、20倍ぐらいのリーチの差がある。エンゲージメントもフォロワー単位で見るとInstagramは1.6%ぐらいなのと比べると、TikTokは8%なので、5倍ぐらいの差がある。多くのブランドがTikTokを使い始めているため、ようやくTikTokのコンテンツ戦略が見えてきたが、今は明らかにユーザーを伸ばせるモデルが出来ている。もちろんコンテンツのクオリティやユーザーとの接し方も大事だが、ブランド側としてはFlicker、Flash、Flareコンテンツを考えるべき。——宮武
How To Grow Your Brand On TikTok: Deconstructing e.l.f. Cosmetics’ Success
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#28「ティファニーの挑戦」 Apple / Spotify
ビヨンセとJay-Zを起用したティファニーのキャンペーンなどについて話しました。
次回配信は来週を予定しています。
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