#37 美容業界の新たな販売チャネルにUber?
ソーシャルコマースは本当にアメリカで流行るのか?、英国デパートSelfridgesのバーチャル都市、メンバーシップ型EC コストコの凄さ、Everlaneが中国市場から撤退
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
美容業界の新たな販売チャネルにUber?
2021年9月からLAに住んでいるPostmatesのロイヤリティプログラムに参加しているユーザーは食事だけではなく、ビューティー商品のデリバリーも頼むことができるようになった。Uberに$2.65Bで買収されたPostmates Unlimitedは18個のビューティー商品をバンドルして$375で直接ユーザーに届けてくれる。Futrtuna Skin、Summer Fridays、Corpus Naturalsなどカルトブランドも含まれているバンドルは店舗で購入すると$1,000超える。『Vogue Business』によると、Uberとしては配車アプリからユーザーのロイヤリティを高めるためにデリバリーサービスに注力していて、その一環としてビューティー商品のデリバリーも始めている。5月にエスティーローダーがUber経由で商品を頼めるようにしていて、その後も複数のブランドがUberを活用し始めている。
Uberとしての課題は在庫管理を常にアップデートする必要があり、どういう価格帯で商品を販売するかによって、顧客満足度が変わる。さらにUberは様々なテイストメーカーと一緒にコレクションをキュレーションするモデルをとっているので、ブランドが選ばれなかった時にどういう対応をするのかなど、ブランドにとってリピート顧客を作れるチャネルかはまだ分からない。ただ、この領域は引き続きUberとしては注力するはずなので、ブランドとしてはUberを新しいディスカバリーチャネルとして試すのは面白いかもしれない。
ソーシャルコマースは本当にアメリカで流行るのか?
InstagramなどのSNSは新しい商品のディスカバリーできるプラットフォームを作った。今までは雑誌、新聞、野外広告、店舗、検索のオプションしかなかったのがSNSを通して大量のコンテンツ・広告を見れるようになった。チェックアウト体験も数クリック以内で完了するまでになり、インフルエンサー・クリエイターの影響力が上がってきた。そんな中、『BANKNOTE』で紹介されているのは、中国のソーシャルコマース市場規模は$250Bを超えて、2023年までには中国の全体のEC売上の14.3%がソーシャルコマースから来ると予想されている。コロナ前から37%の中国のオンラインでショッピングしたことがある人たちはライブ配信から商品を購入したことがあったので、同じトレンドがアメリカに来ると多くの人が言っている。
ただ、一つ中国とアメリカの大きな違いがWeChat。WeChatはTencentが運用するスーパーアプリで、メッセージ機能としてスタートしたが、今ではゲーム、エンタメ、ソーシャル、決済など、なんでもWeChatのミニプログラム経由で出来るようになった。それによってWeChat以外にユーザーは他のアプリをダウンロードしなくて良いようになる。アメリカでは逆にアプリのユースケースがしっかりしているため、コンテキスト(状況)に応じてアプリを変えるのに慣れている。このコンテキストスイッチングが中国ではないからこそ簡単にソーシャルな環境から購入体験に行ける。アメリカでソーシャルコマースが流行るには色んなコンテキストを組み込んだアプリが必要になるかもしれない。コマースを含む、アメリカでスーパーアプリ化出来そうなアプリを考えると、Amazon、Shopify、Facebook、などが候補社として上がる。
英国デパートSelfridgesのバーチャル都市
イギリスのハイエンドの百貨店Selfridgesのロンドン店では2週間ほど、特殊なポップアップをローンチした。リアルとデジタルストリートウェアデザイナーのCharli CohenとYahooのコンテンツスタジオのYahoo Ryot Labがポケモンと一緒にバーチャル空間「Electric/City」を開発した。『BoF』によると、ポップアップに訪れたユーザーはQRコードでその世界をアクセスできて、オンラインでは誰でもアクセスできるサイトも存在する。同時にバーチャルとフィジカルの商品も販売している。このようにファッション企業やリテーラーがどんどんリアルとデジタル世界を跨ぐプロジェクトを実行している。
Electric/Cityは実際の街をテーマにして作られていて、ビデオゲームっぽい感覚で体験が可能。ユーザー体験を簡単にするために、歩き回るのではなく、矢印をクリックすると次の場所や映像を見れるようになっている。体験の中ではバーチャル服も購入できて、その服をアバター企業のReadyPlayerMeと提携して、自分のアバターをデザインしてバーチャル服を着せてAR上で写真を撮れる。今後もバーチャル空間やAR体験を活用して、ブランドは新しいマジックモーメントを作ろうとしている。
🎙 Podcast
This Week’s Topic: メンバーシップ型EC コストコの凄さ
今回は、コストコのビジネスモデルや、PBブランド「KIRKLAND」、注目する次世代コストコの話をしました。(Appleの方はこちら)
✏️ View
Everlaneが中国市場から撤退
9月12日にアメリカのD2CブランドEverlaneがTmall店舗をシャットダウンすると『BoF』で報じられた。既にWeChatのミニプログラムからの販売も止めている。ここ最近ではUrban Outfittersも同じような結果に至ったが、アメリカのアパレルブランドは中国市場に興味を示しているものの、うまくいかないケースが多い。2年前にEverlaneが始めたTmallグローバル店舗は53万人のフォロワーがいるが、今後はEverlaneサイトから購入をオススメしている。過去にはAsos、Topshop、Old Navyなど、マス向けのアパレルブランドが撤退している。Forever 21も8月に3度目の進出を行なっていて、今回はフラッシュセールやグループ購入プラットフォームのVipshopやPinduoduoを活用して市場展開する予定。
Editor's View
中国のアパレル市場規模の$200Bに引き寄せられるブランドは多いが、国内ブランドの強さに圧倒される海外ブランドがほとんど。さらに直近では製造者がPinduoduoなどと提携して顧客・需要データを取得して自社ブランドを作れるC2M戦略を繰り広げている中、海外ブランドと似たクオリティで単価の低い商品の販売が可能になっている。そのため、今のアメリカの大手リテールブランドやD2Cブランドだと恐らく参入するのにはハードルが高すぎるかもしれない。SHEINやCiderのようなサプライチェーンを握っている会社の値段の低さには勝てなく、プロダクトのクオリティもラグジュアリーブランドほど高くないため、中間層にいるブランドほど、中国市場では苦しむかもしれない。——宮武
📰 News
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