#43 パタゴニアがワインを販売する理由
Nike x PattaのドロップサイトがどうShopifyで作られたのか、SnapchatはARを活用するブランドを増やそうとしている、次世代起業家は、クリエイターだ。、D2C企業の人事と注目の職業
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
パタゴニアがワインを販売する理由
アウトドアウェアなどを販売するパタゴニアは実は2012年から飲食事業「Patagonia Provisions」を運営している。アンチョビ、ビール、チリ、ホットソース、ビーフジャーキーなどを作っていた中、最近はワインをローンチ。2012年に飲食事業を立ち上げたきっかけはパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードが農業が大きく環境問題を影響すると理解していたから。『Retail Brew』の取材によると、パタゴニアの環境問題を解決するミッションから考えると、この事業をやらないという選択肢はなかった。ワインに展開したのも、元々ビールから始めて、よりオーガニックなワインを探している需要が高まっているのを感じて始めたとのこと。今までのパタゴニア顧客と比較してPatagonia Provisionsはもう少し若者層にアピールしていて、数年前から日本展開もしている。サステイナビリティを本気で信じている会社として、そのミッションが最もインパクトありそうなところに投資していくのが重要になる。事業がうまくいくかは分からないが、パタゴニアのブランドにあった展開かもしれない。
Why Patagonia is making wine (and beer and chili and hot sauce and more)
Nike x PattaのドロップサイトがどうShopifyで作られたのか
今年注目を浴びた「Nike x Patta」のコラボサイトは実はShopifyで作られた。担当したのは「Ask Phil」というShopify Plus代理店。短期間で数十万人が一気にサイトを訪れるサイトを開発する際にライトでエラーが出にくい構成を考えなければいけなかった。Ask Philは、ヘッドレスサイトを作るのもかなり得意だったが、最終的にShopify 2.0を選んだそう。Shopify 2.0はモジュール型のサイトを作れて、Contentfulより使いやすいかもと『1-800-D2C』のインタビューで語っている。そしてネイティブフィルタリング機能がかなり衝撃的だったようで、フィルターをするためのアプリを導入しなくて済んだので、結果フィルター機能を60行のコードで作れたらしい。検索もAlgoliaを使うところをShopify 2.0の検索機能で十分だった。もちろんヘッドレスの方がカスタマイズやよりパワフルなサイトは作れるが、コードをしなくてここまでのサイトを作れるのはShopifyがかなり進化した証拠でもある。Ask Philがオススメするのは7〜8カ国や言語だとShopifyはまだ良い解決法がないので、ヨーロッパのブランドとかだとヘッドレスが良いが、使いやすさとしてはShopifyが最高に良くなった。
SnapchatはARを活用するブランドを増やそうとしている
ARを多くのブランドに活用して欲しいSnapは今年の夏以降にARアセット制作スタジオやAR代理店を立ち上げている。そして5月にはブランドとARデザイナーを繋げるクリエイターマーケットプレイスをローンチ。Snapとしては出来るだけAR業界への参入障壁を落としてブランドにARという新しい広告フォーマットを試して欲しいと考えていると『Modern Retail』で紹介されている。そして、Snapは7月にブランドのアセットをデジタルモデルにするVertebraeを買収。コロナの影響でよりECに頼らないといけなくなったブランドはARなどを活用してユーザー満足度をキープしようとしている。Snapは過去にBurberry、Dior、Louis Vuittonなどと連携してAR試着レンズを作っている。
2021年9月にSnapは大手広告代理店のWPPと提携して、WPP従業員にARコマースツールのサポート方法などを教育している。2021年末までに1,000人のWPP従業員がAR支援できるようにするとのこと。Snapとしてはこのようなツールをブランドに提供できると、ブランドはより若者層にアピールできると信じている。ただ、まだARがどれだけ広告・コマースツールとして効果的かは未知数。売上にARがより繋がるデータや低い返品率になるデータはあまり共有していない。Snapからするとコロナの影響でARトレンドは続くと信じていて、ブランドとしてはAR試着などは重要な顧客体験になると思っている。
How Snap is trying to get more brands to use augmented reality
🎙 Podcast
This Week’s Topic: D2C企業の人事と注目の職業
今回は、リテールテック業界で今後重要になるかもしれない職業や、トップD2C企業の経営陣の人事、コンテンツのスペシャリストなど話をしました。(Appleポッドキャストの方はこちら)
✏️ View
次世代起業家は、クリエイターだ。
2021年10月にShopifyは音楽配信サービスのSpotifyと提携してアーティストがSpotifyのプロフィールページにShopify店舗を表示できるようにした。Shopifyからすると今1,000人のアーティストしかShopify店舗を作っていないのを提携によりさらに増やすことを考えている。ShopifyとしてはNetflixの自社ショッピングプラットフォームを開発したり、TikTokのアプリショッピングを提供したり、エンタメとコマースのコラボに最近フォーカスしている。アーティストをただ音楽制作するクリエイティブな人ではなく、クリエイティブな起業家として考えると、音楽制作以外のマネタイズオプションを提供するのは当たり前な時代になってくる。ShopifyからするとSpotify、TikTok、Instagram、Facebook、様々なディストリビューションの場所でコンテンツのディスカバリーだけではなく、クリエイターがマネタイズできるようにすることによって自社の売上成長とともに新しい起業家を生み出せる。
Editor's View
Off Topicでは、2020年から「クリエイターが次世代ブランドであり起業家」と言っているが、それをソフトウェアレベルで可能にしているのがShopifyだ。今のSNSやメディアプラットフォームはディストリビューション、いわゆるオーディエンス集めに長けているが、マネタイズやクリエイターファーストなプラットフォームになりにくい。広告で主にマネタイズするプラットフォームとしては最終的にクリエイターがコモディティ扱いになってしまうので、クリエイターからすると自分たちの力で直接ファンからマネタイズしなければいけないようになっている。ただ、他のD2Cブランドやソフトウェア企業と違ってクリエイターはディストリビューションを持っている。そんなクリエイターたちがコンテンツ制作だけではなく、D2Cブランドなどと対抗する会社を本気で作った場合には強敵になりそう。ー宮武
📰 News
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