#44 Forerunner Venturesのパートナー語る、進化する消費者の心理
サブスクお菓子ボックスの未来、販売する場所だけじゃない、リアル店舗の需要が復活、注目のリテール店舗、バーチャルインフルエンサーが人気になる中国
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
Forerunner Venturesのパートナー語る、進化する消費者の心理
リテールスタートアップへの投資で有名なVC Forerunner Venturesでパートナーとなったニコル・ジョンソンは、ジョインする前の仕事では大手リテール企業にD2Cの小売「Warby Parkerモデル」を教えるコンサル業にいた。Forerunnerにジョインしてからリテール業界の進化だけではなく、ユーザー心理の進化も追っている。8年前はユーザーは自分が過ごしている場所(SNSなど)でブランドと出会いたいと言っていて、その影響でD2Cブランドが爆発的に伸びた。今はその心理を変化してブランドが多すぎるのを課題としているユーザーは良いレビューや最も自分のバリューとフィットする会社をフィルタリングするのを支援して欲しいと『Modern Retail』の取材で語る。Forerunnerとしてはこのシフトに当てはまる投資はリテールとウェルネスを両方抱えている会社と考えている。コロナ明けでより自分のライフスタイルやウェルネスに投資したいユーザーが増えていく中、元々評価していた値段、クオリティ、便利さ、ユーティリティ性が今ではクリーン、サステイナブル、コミュニティ中心へシフトしている。この「Thoughtful Consumption(心のこもった・より考える消費)」への大きな変化があるからこそForerunnerはThingtestingやBuffalo Marketに投資していてる。そしてリテール x ウェルネスではouraやCalibrateが人気になっている。
彼曰く、最近のForerunnerの投資先が抱えている課題はサプライチェーン問題で、投資する際にはマーケティング分野で優位性を持っているかを確認している。そして今現在投資先の中で需要が高まっている役職はChief People Officerだそう。
DTC Briefing: Forerunner’s Nicole Johnson on how the consumer psyche has evolved
サブスクお菓子ボックスの未来
アメリカではお菓子が好きな人が多く、コロナでよりお菓子の消費が上がっている調査結果もある。Z世代とミレニアル世代の9割は1日数回お菓子を食べていて、92%は毎週1食分はお菓子でリプレイスしているとニュースレターの『Consumer Startups』で伝えている。その影響もあって、アメリカのお菓子市場は$100B以上。特にリモート環境になってから無料でオフィスでお菓子をもらえていたのが出来なくなり、お菓子ECの需要が上がった。それを解決するのがスナックボックスだが、大体スナックボックスだと大きく二つ課題が存在する。一つはユニットエコノミクス。$20の箱でも恐らく黒字化できないので、ちょっと高めの値段設定が必要。そして二つ目はリテンション。グロサリーと違って、週に何回も購入してくれないため、離脱率、特にB2C系のサブスク事業は高めになってしまう。大きくスナックボックス業界はB2CとB2Cで別れている。B2CだとBokksuなどが人気プレイヤー。B2C系のスナックボックスだと平均注文額がかなり高めの商品、もしくはコーヒーのような高い頻度で購入してもらうのが重要になる。Facebook広告が上がっている中、今後はよりブランドと商品セレクションが重要になる。Bokksuはそれを補うためにマーケットプレイスやグロサリー事業も展開している。そしてB2BだとGoogleなど企業の人事部門が従業員向けに購入してくれる仕組みとなっている。ここもリテンションが課題となる。SnackMagicのようなB2Bプレイヤーはリテンションを上げるためにスナック以外の領域への展開も始めている。
販売する場所だけじゃない、リアル店舗の需要が復活
一時期EC需要に負けていたリアル店舗の需要がまた上がっている。今年は2017年以来、チェーン店の中では新しくオープンする店舗数が開店する店舗数を超える。デパートの店舗数は落ちているかもしれないが、アメリカでは薬局、コンビニ、飲食系のチェーン店は増えている。店舗数が上がっている一つの理由はリアル店舗の価値の気づき。今は店舗は商品を販売する場所だけではなく、ECオーダーのフルフィルメント、ディストリビューションハブ、商品受け取り場所、返品場所になる。オンライン上で顧客獲得コストが上がる中、リアル店舗がより効率的なプロモーションチャネルとなり始めている。特に最近ではより短期のリースなどの交渉もできる。
そして今までの店舗と違って、大手リテーラーはより小さめで体験型の店舗を作っている。『RetailDive』では、Dick'sの新しい店舗について紹介している。バッテンングセンター、ロッククライミング、ゴルフのシミュレーションなどが可能なインタラクティブな要素を組み込んでいる。Levi'sではユーザーがTシャツやデニムをカスタマイズ出来る機能を入れている。Warby Parkerの2019年の実績を見ると、リアル店舗での売上がオンライン上の売上を超えていたので、今後もリアル店舗の拡大にフォーカスしている。今後はEC vs リアル店舗ではなく、両立して、どう言う形で各チャネルがサポートし合えるのかを考えなければいけなくなる。
✨ New Stores
フランスのブランド「ジャックムス」は、新作バッグの発売を記念して、ピンク1色の24時間営業のコンビニを3日間限定で「JACQUEMUS 24/24」をオープン。自動販売機のようなディスプレイもかわいい。タイラー・ザ・クリエイターが手掛ける「Golf le Fleur」のポップアップも話題だった。彼がデザインしたポップアップは、カルフォルニアのマリブのとある丘の頂上で開催。WWDの取材によると、「人々に街から少しどこかに出かけてほしかった」と話している。ポップアップの周りの展示から店舗に行くまでの体験づくりのこだわりはファンを魅了した。そして、「Parade」のNY店舗はまさにミュージアムのよう。CEOのインスタグラムには、インスピレーションを得たものも紹介されているのでそれもぜひチェックしてみて。最後に、Glossierが最近LA店舗を出店したのが新しい。実は、その隣にカフェ「Glossier Alley」をLAの人気カフェ「Alfred」とコラボし、オープン。熱量の高いコミュニティを持つGlossierだからこそ、ショッピング後に限定メニューのピンクラテを友達と飲みながらおしゃべりするのは最高に楽しいはず。——草野
✏️ View
バーチャルインフルエンサーが人気になる中国
中国ではバーチャルインフルエンサーの人気が急上昇している。『South China Morning Post』によると、2018年ではバーチャルアイドル市場規模は$15.5Mしかなかったのが2023年には15倍成長すると言われている。元々音楽やファッションで存在したバーチャルインフルエンサーは色んな場所で出てきている。日本の初音ミクや中国の洛天依(ルォ・テンイ)はTaobaoやTmallのライブ配信イベントなどで出演していて、リアルなインフルエンサーより3倍ぐらいのエンゲージメント率を達成している。上海ファッションウィークではDiorは人気モデルでDiorアンバサダーのアンジェラベイビーをデジタル化した「Angela 3.0」をローンチ。中国ではZ世代向けにこのようなバーチャルインフルエンサーなどの活用が増えると思われるので、この流れがアメリカや日本に将来来る可能性がある。
Editor's View
アメリカでは最近クリプト企業のDapper Labsが買収したバーチャルインフルエンサーのLil Miquelaが有名だが、同じような流れは来てもおかしくない。徳の個人的に注目しているのはFortniteでも出演したSuperplastic。次世代ディズニーを目指している投資先のSuperplasticはSNSなどを活用してデジタルキャラクターのストーリーを語り、ブランドとのコラボやおもちゃの販売によってマネタイズしている。特に今後バーチャル世界により多くの人たちが時間を過ごすと考えると、リアルなインフルエンサーだけではなく、デジタルキャラクターやIPと直接接するようになる。——宮武
📰 News
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・Amazonが2022年にUPSとFedexを超えてアメリカ最大級の配送サービスになる - CNBC
メゾンキツネから「Kitsuné Ventures」が創設 - WWD
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