#46 Supergreatがどうライブコマース領域を勝ちにいくか
D2Cモデルへシフトする大手リテールブランドが増えている、Instagramキュレーターが新しいインフルエンサー、2021年振り返り w/森 雄一郎さん、Amazonの優位性と逆襲
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
Supergreatがどうライブコマース領域を勝ちにいくか
ライブコマースのSupergreatのアプリを開けると年齢、肌色、スキンタイプ、髪の色、髪質、どういうビューティー領域に興味があるかと聞かれた後、キュレーションされたフィードが提供される。お昼に60年代のメイクチュートリアル、19時にSephoraのコレクションの紹介など、様々なクリエイターのライブ配信動画のスケジュールも見えるようになっている。Supergreatは元々クリエイターがショートフォーム動画で商品レビューをするプラットフォームだけだったが、去年あたりからライブコマース領域へ入り込んだ。今では20万人のSupergreat登録者が合計25万動画を制作した。そして週の25%の時間は誰かしらライブ配信している。
さらに『Retail Brew』の取材によると、SephoraやCoverGirlなど大手ブランドはSupergreatのクリエイターと提携してイベントやプロダクト紹介の配信をしてもらっている。大体営業イベントだと平均600〜700人の同時アクセスで、最高毎分$60の販売があったと語る。さらに30分ごとに大体2,500個のコメントがある。Supergreatの強みはビューティー領域にしかフォーカスしていないことで、今後はユーザーにアプリ内通貨などのインセンティブを使ってよりエンゲージメントや購入に至る行動を設計していく予定。ライブコマースアプリとしてどうコンテンツを広告っぽく見えないようにして、エンタメ感があるコンテンツとして見えるようにするかが大事。
How beauty app Supergreat aims to stand out in the livestream shopping space
D2Cモデルへシフトする大手リテールブランドが増えている
10年前はデパートがイケてるアパレルを購入する場所になっていたのが、今はブランドは自社で販売するだけで十分と気付き始めている。ナイキの2010年の売上を見ると、D2C売上はたったの15%しか占めてなかったが、2020年ではD2C売上が全体の35%を占めていて、直近の決算発表ではD2C売上が全体の40%を占めるようになった。ナイキとしては卸パートナーの数を減らして、自社店舗とデジタルチャネルにフォーカスしたのが理由だが、ナイキ以外にも大手ブランドが卸に頼るのを頼るのを止めようとしている。特にスポーツ系のブランドはこのシフトをリードしていると『Retail Dive』が伝える。もちろんまだFoot LockerやDick'sなど特化型な大手リテール店舗は重要視されているが、デパートなど幅広い商品カテゴリーを扱っている店舗ほど提携しなくなっている。ナイキは特に特殊な体験を提供しない店舗との関係性を切っていて、直近ではUrban outfitters、DSW、macy's、Zappos、Dillard'sなどが含まれる。Adidasは2025年までに売上の半分をD2C事業から来ると目標を立てていて、それに対応するサプライチェーンや在庫管理の準備を行なっている。そしてUnder Armourは2,000〜3,000卸店舗との関係性を閉ざすと発表して、2020年Q4ではD2C事業が11%成長した。
今まで90%〜95%の売上が卸だったブランドも徐々に自社店舗を出したりしている。Wilsonはポップアップを過去何回か試していたが、今年からリアル店舗をオープン。Crocsも売上の半分以上がD2C事業からきていて、Levi'sもD2C事業を次の10年で売上の6割にしたいと語っている。もちろん飲食系のブランドやパーソナルケアブランドなどは卸に頼る姿勢を示しているので、カテゴリーによって変わるが、業界によってはD2C化するブランドが多くなっている。
These traditional brands are shifting to a DTC model. Here's how.
Instagramキュレーターが新しいインフルエンサー
スーツケースブランドのRimowaが最近特別な写真撮影を行って、そこから複数枚の写真をピックアップして数名のInstagramキュレーターに送り、そこから1枚選んで彼らのアカウントに投稿するようにお願いした。これはInstagramキュレーター向けの独占コンテンツとなり、キュレーターは断ることもできる(無償で提供した)。過去にブランドから直接コンテンツをもらうことが少なかったInstagramキュレーターにとってかなり違う扱いになった。『Highsnobiety』ではRimowaのキュレーターのマーケティングについて記事にしている。Instagramキュレーターがファッション業界の人たちからしてもリークやニュースのソース元になって居る中で、ブランドにとっては重要な存在になり始めている。カルチャーブランドになりたければ今世の中で何が起きて居るかを知らなければいけない。ブランドのヘリテージを教えながらモダンさを出さなければいけない。Rimowaからすると自社のアカウントから自慢げにプロモーションするより若者が支持しているインフルエンサー、Instagramキュレーターアカウントからの投稿を見てくれる。
今ブランド側にとって自社でコントロールできないチャネルが重要になって居る。ブランドが会話を作るよりファンから会話・話題を作ってもらうためにRimowaは写真撮影の仕方も変えた。今まではプロダクトがフォーカスになって居る写真を撮影して、撮影した写真からいくつか選ぶ。今回の写真撮影ではストーリーの中にプロダクトがあるだけで、フォーカスはストーリーの中の人物だった。CTAも含めないので、どこかのタイミングでプロダクトに気づくことを願うしかできない。実際にキュレーターと写真を共有した時もキャプションやテキストなどの要求をしなく、ただ面白い写真を共有しただけ。
ARE INSTAGRAM CURATORS THE NEW INFLUENCERS? RIMOWA THINKS SO
🎙 Podcast
This Week’s Topic: 2021年リテール振り返り w/ 森 雄一郎さん
今週のトピックは、スペシャルなゲスト FABRIC TOKYOの森 雄一郎さん(@yuichiroM)をお迎えし、リテールテック・D2C 2021年について振り返りました!アメリカのサプライチェーン問題 日本への影響はどうだったのか?D2Cブランドのエグジットについて、地味に影響が大きかったiOSアップデート、日米のサステナビリティの意識など話をしました。
Apple Podcastの方はこちらから聴くことができます。
✏️ View
Amazonの優位性と逆襲
ShopifyなどアンチAmazon組が分散型(自社のブランドをコントロールする)戦略で成長してきた中、このサプライチェーン問題やAppleのiOSアップデートなどでAmazonの強みがより明確になっている。Amazonが何年も前から自社のロジスティックスを抱えたり、広告管理をすることによってブランドを引き寄せられている。『2pm』によるとAmazonはGoogleとFacebookに続きアメリカのデジタル広告市場の10.3%を占めている。そして自社のサードパーティブランドが在庫切れにならないようにAmazonが所有しているコンテナ船の空きスペースを安く売ったり、郵送用の飛行機のリースもしている。今まではブランドコントロールがプライオリティだったブランドも今はオンタイムの配送が最も重要視されているので、それを最も実現可能なAmazonに頼り始めている。Amazonは自社プラットフォームのデータを収集しているかもしれないが、今の状況だと最も頼もしいパートナーになっている。
Editor's View
Amazonは貨物フォワーダー事業を2016年から始めているので、コンテナ船のスペースの販売が出来る。今だと中国からアメリカ行きのコンテナ船のスペースが$12Kかかるものを$4Kで販売している。もちろん過去のCEREAL TALKで話したように港の混雑の課題は解決しないが、国内のロジスティックス投資にAmazonはかなり投資しているので、最もスピード感を持って商品をユーザーに届けられる会社かもしれない。そして今だと投資先含め、どのD2CブランドやリテーラーもiOSアップデートに苦しまれている中、Amazonで広告を出す需要が増えるはず。Googleも同じ状況にいるが、アグリゲーターはこのような課題の時に最も役に立つ存在。GoogleもAmazonも10年以上前からインフラへの投資をしているからこそ、似たコンセプトの会社が出てきてもリプレイスがしにくい。——宮武
📰 News
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