#5 大手小売のおしゃれなプライベートブランドが狙う市場
地方店舗の出店も増加「D2Cのオフライン戦略」、ミニマリズムにテキストを、ブランドスローガンが再熱、ブランドにとってリセールは本当に価値があるのか?
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武徹郎(@tmiyatake1) and 草野美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
大手小売のおしゃれなプライベートブランドが狙う市場
大手小売店は自社のプライベートブランド(PB)がパッケージのクリエイティブにこだわりはじめている。これまでは大手PBはプレミアム商品に対して、D2Cブランドのようなかっこいいパッケージングを作ることで比較的高い商品を販売していた。今回は、通常価格のPBのデザイン改善をし、低い単価でありながらこんなにおしゃれな商品を買えるという満足度と提供している。大手小売店ターゲットは、”流行り”のサンセリフ体や明るい色合いなど今までのD2C企業のマーケティング手法を活用してD2Cブランドがカバーできていないミドルクラス以下の層を狙っている。ホールフーズのPB「Whole Foods 365」も2020年夏にミニマリズムを強調したデザインを活用して安めの商品を普通以上のルックスとして表現している。近年のPBで共通のテーマとして挙げられるのは「Joy(喜び)」。遊び心を入れながらポジティブな印象付けをするのがトレンドとなっている、D2Cブランドのように。
When Did Generic Grocery Brands Get So Good Looking? – Eye on Design
地方店舗への出店も増加「2021年のD2Cオフライン戦略」
コロナでオンライン売上が上がり、店舗閉鎖する企業も多い中、D2Cブランドはオフライン店舗の出店が増えている。昨年2月のEC売上が$61.7Bだったのが、1ヶ月で$70.1Bに増加。大手小売企業ターゲットはというと、店頭受け取りシステムを導入しデジタル領域に積極的だ。逆にD2Cブランドは、店舗を活用して新しいユーザー獲得チャネルを確立しようとしている。D2Cの場合、店舗は「商品を試すショールームやブランドビルディングの場所」として認識されている。そのためより小さなスペースを活用したり、在庫を扱わない店舗が多く、結果購入はオンラインに流す形が多い。メガネブランド「Warby Parker」は100店舗以上、マットレスブランド「Casper」は200店舗オープンの計画を発表。その背景には、オンラインのユーザー獲得コスト高騰がある。Casperのマーケティング費用は2019年では$154.6M(前年比で22.5%増)、ペットフード「Chewy」も広告とマーケティングで2019年に$426.9Mを費やした。そして、興味深いのが大都市ではなく地方エリアにD2Cブランドの店舗が増えてきたこと。これまではニューヨークなどへの出店が多かったが、コロナで大都市から地方への移住が増え、特により富裕層が住んでいる地方を狙って出店が増えている。と同時に店舗コストを抱えたくないという点で、ターゲット、コストコ、ノードストロームなど大手小売店に入りたいD2Cブランドも増えているようだ。
How DTC brands will approach physical retail in 2021 | Retail Dive
ミニマリズムにテキストを、ブランドスローガンが再熱
昔のナショナルジオグラフィックやニューヨーカーの雑誌広告を見ると、大量のテキストが含まれたコピーが多かった。今では、商品写真だけのシンプルでミニマリズムを強調した広告が増えていったと同時に、テキストの量が減り、スローガンもなくなっていった。その中で、テキストが少ないからこそスローガンを使った新しいマーケティングが再熱しつつある。良い事例がホットソースブランド「Red Clay」。ボトルやサイトには「The Red Clay Changes You(Red Clayがあなたを変える)」とかなり大胆なスローガンを記載している。このブランドは少しずつ成長していたが、特に伸びた理由は、大手卸事業を展開できたこと。そのきっかけの一つを作ったのはスローガンを作った「Outline」というブランドエージェンシーだった。当時、Red Clayがホールフーズに営業した際「ラベルは美しいが、売りどころが見えない。どうやって顧客を惹きつけるの?」と言われてしまい、そこでスローガンを入れることをOutlineが提案。結果として2020年は前年比の3倍の$1Mの売上、そして2021年は$3.5Mの売上を想定している。このトレンドに対して色々な意見があり、有名ブランドエージェンシー「Red Antler」では、現代ブランドは色んな形でプロダクトや会社を表現しなければいけないので、一つのスローガンは複数のコンテキストには役立たないと言う。実際にWarby Parker、Away、Glossierなど今はスローガンがなくても、どういうブランドなのか理解できる人が多いだろう。しかし、スローガンは、覚えやすく、インパクトがある。今後もブランドスローガンのトレンドには注目だ。
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ブランドにとってリセールは本当に価値があるのか?
リーバイス、アイリーン・フィッシャー、アークテリクスなど、自社のリセール事業に力を入れている企業が増えている。自社のユーズド製品を買い取り、専用ストアで販売。その裏側をやっているのが「Trove」という自社買い取りと販売をまるっと請け負うサービス。消費者向けでは、The RealRealやRebag、もうすぐ上場予定のThredUPなどがこのタイプ。それに対してCtoC領域で提供するのが「Archive」。女性向けワークウェアブランド「M.M.LaFleur」は、ArchiveとCtoCサイトの立ち上げや管理、データ連携などを近々委託予定。そして、ThredUPとも提携し、不要な服をThredUPに送り、買い取ってもらえた分はM.M.LaFleurのストア上で使えるポイントになるという取り組みを既に行っている。あくまで既存顧客のロイヤリティ増加が目的で、売上や新規顧客獲得は狙ってないようだが、実際同じような取り組みをしている老舗ラグジュアリーバッグブランド「マーク クロス」の全体の売上に占めるリセールは5%以下だという。自社買い取り&販売タイプのリセールは、運営に非常に大きなコスト(商品の確認や出品作業・発送)がかかるのに対して、CtoCモデルは手軽だが、クオリティコントロールが難しいという問題がそれぞれあるようで、既に上場してるThe RealRealなどのリセールプラットフォームは今のところ軒並み赤字。ブランドが単体でやって黒字化するのはかなり難しいとなると、やる目的が重要になってくる。パタゴニアのようにブランドミッションと親和性が高いと相性が良いが、ただのプロモーション目的では危険信号なのかもしれない。
Editor's Note
ハイブランドのヴィンテージや1点ものがかっこいいという価値観が広まり、Z世代などがファストファッションと合わせてコーディネートしているというのを聞いて興味を持ったのですが、コロナでEC全体が好調というのもあり、リセール市場がファッション全体を遥かに上回る伸びを見せているそうです。他にも面白い事例として昨年ローンチしたアパレルブランド「Another Tomorrow」があげられていて、全商品につけられたQRコードを読み取るとサプライチェーン全体が確認できたり、リセールマーケットに出品される際に元の商品写真を使用することが可能。製品にRFIDを埋め込んでメンテナンス方法や問い合わせ先をスマホで読み取れる、みたいなのは個人的にも興味あったので、この辺りの手軽なソリューションが出てくることにも期待です。———沼田
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