#56 ファッション業界に進出するDAOは何をもたらすのか?
メタバースファッションウィーク、ハイブランドvsデジタルデザイナーの構図に、D2C企業の調達とスケールの壁、スマートバイク「VanMoof」のリアリティショー
🥣 Briefing
ファッション業界に進出するDAOは何をもたらすのか?
テックやメディアの文化批評を扱う人気ニュースレター「Dirt」が先月DAOを立ち上げた。彼らは、課金や寄付金を集めるのではなく、独自NFTを販売し、購入者にアートワークはじめ編集方針などの議決権を与える形で運営。このように出資だけでなく、能動的なコミュニティとして機能する自律分散型組織のDAOは、ファッションの舞台でも資金調達、生産方法等に変化にもたらすと『BoF』は伝える。
デジタルファッション領域への支援をする「Red DAO」では、2021年11月の発足以来、ドルチェ&ガッバーナのNFTコレクションの購入を皮切りに、デジタルファッションハウス「The Fabricant」など投資を積極的に行っている。このDAOも専用トークンを購入することで投資検討やリクルーティングに対する議決権を獲得できる。Red DAOのメンバーであり、Magnetic Capitalのマネージングディレクターのミーガン・カスパーは、「デジタルファッション領域において一人が単独でできることはそう多くないが、50人以上が集まることで大きな影響力を持ち得る。」と話す。
また、若手デザイナーのジェレミー・カール、ユージン・アンジェロが所属するデザイン・製造DAOでは、スマートコントラクトを通じてサプライチェーン全体を管理することで、製造と調達の透明性を担保しているだけでなく、クリエイターが製造部門に対してより大きな裁量権を持つことを可能にしている。
一方で、法整備が未熟であるがゆえのリスクが依然あることも事実だ。DAOを通じて知り得たNFTを、投票が完了する前にメンバー個人が先んじて購入してしまうといったケースも考えられる。中央集権でないことや、人材の流動性はDAOの強みであると同時にリスクをはらむ弱みであることも理解しなくてはいけない。
メタバースファッションウィーク、ハイブランドvsデジタルデザイナーの構図に
メタバースに出現した2つのファッションウィークは、新しいデジタルクリエーターに応えるものとファッションの守旧派にスポットを当てるもので、異なるアプローチをとっている。『GLOSSY』によると、この分裂は、メタバースにおいても業界の構造を変えることの難しさを示しているという。
「Crypto Fashion Week」では史上初のメタバースファッションイベントとして2021年にスタートし、パンデミック中にデジタルファッションの可能性を見出した多くのデジタルデザイナーのスキルと才能にスポットライトを当てた。一方でDecentralandと分散型ネットワークBoson Protocolが運営する別のメタバースファッションイベント「Metaverse Fashion Week」では、ドルチェ&ガッバーナやエトロなどメタバース展開に取り込んでいる。ブランドにとって、メタバース界への参入は従来のファッションイベントから角度を変えてどう魅せるかを思考することが求められる。そのうえでDAOのサポート、没入型体験のために作られた専用ワールド、デジタルデザイナーへのさらなるフォーカスといった機能はこれからもさらに重要視されるだろう。
As 2 metaverse fashion weeks take shape, it's luxury brands vs. digital designers
🎙 Podcast
スマートバイク「VanMoof」のリアリティショーが面白い
今回は、スマートバイクの「VanMoof」のリアリティショーからプロダクトの特徴を生かした動画コンテンツについて、セレブリティから調達するD2Cブランドのシナジーについて話しをしました。
✏️ View
D2C企業の調達とスケールの壁
2021年7月にGlossierは、$80MのSeries E調達を発表してから自社のPoSや技術開発やディストリビューションチャネルにフォーカスしすぎて、直近でGlossierが3分の1の従業員を切った。一方で同じタイミングでSavage x Fentyが$120M調達、Skimsが$240M調達を発表している。3社とも今のD2C企業がスケールするための課題とトレンドを象徴している。ビューティー業界では徐々にブランドのECサイトからマーケットプレイスサイトにシフトし始めていると『2PM』が特集している。Walmartは100社以上のビューティーブランドと提携してサイトで販売。SephoraはKohl'sと提携して、UltaはTargetと提携している。逆にGlossierは自社のブランド体験をコントロールするために提携を避け、2018年と2019年にはGlossier CEOのエミリー・ワイスは「AmazonではGlossierを販売しない」と断言していた。それが今ではアメリカのAmazonに行くと、複数のGlossierプロダクトを購入できるようになっている。
Glossierと同じように自社のカスタムプラットフォームを開発していたSavage x Fentyだが、パートナーシップや提携に関してはGlossierよりオープンな姿勢を見せている。Amazonと一緒にファッションショーを行なった。Skimsはオリンピックでアメリカ代表向けの下着を開発したり、Fendiなどともパートナーシップを提携している。各ブランドは色んなチャネル戦略を今後試すはずなので、成功するとは思われるが、今後ブランドがどのようにスケールするべきかが課題として残る。今までAllbirdsやWarby Parkerなど大きめな上場は出来たがまだ赤字なのが懸念されているブランドもいる。逆に最近$1Bの時価総額で調達したAthletic Greensは$200Mの売上run rateまで調達せずに成長した。今後の評価軸がマーケットシェアなどではなく、黒字化しながらスケールできることになりそうだ。
Editor's View
上場しているD2C企業の過去12ヶ月のパフォーマンスを見ると、ほぼ全社が株価が下がっている。もちろん一部は市場が悪化しているからということもあるが、それによって2022年に上場を検討していたD2C企業が上場を延期する可能性が高まっている。そしてAwayやGlossierなどユニコーンD2Cブランドはユニットエコノミクスと黒字化にシフトしていく気がする。やはりD2Cとは一つのチャネルでしかなく、スケールするにはリテール企業として考えないといけない。特に2022年〜2023年ではサプライチェーン問題がD2Cブランドにとって続くと考えると、ユニットエコノミクスもさらに厳しくなるかもしれない。ー宮武
📰 News
大坂なおみや様々なセレブのブランドを立ち上げるインキュベーターA-Frame Brandsが$11.2M調達を発表 - BoF
リアーナ、Savage x Fenty$3Bぐらいの時価総額で上場検討中? - Bloomberg
ファッション起業向けのサプライチェーンのOSを開発しているCalicoが$2.1M調達を発表 - TechCrunch
EC起業が他のECブランドの商品を簡単に販売できるECプラットフォームのCanalが$22.5M調達を発表 - Morning Brew
元Red AntlerでD2C企業を分析するTikTokクリエイター - Retail Brew
来週のポッドキャストもゲストをお呼びしてお届けします。アメリカのアジアンフードのトレンドやDoordashのチャネル開拓についてなど伺いました。ヒントは、ラーメン界のヒーローです!お楽しみに!🍜 by CEREAL TALK編集部
CEREAL TALK(@cerealtalkjp)Yujiro Numata(@Numauer) Tetsuro Miyatake(@tmiyatake1) Miki Kusano(@mikikusano)