#63 普及が進むAmazonの手のひら決済システム
豆がなくても大丈夫、カカオフリーのチョコレートバー、TikTokクリエイターがリアル店舗をオープンする理由、中国市場のマーケティングの変化、中国の旅行グループチャット施策、ブランドサイトを査定するスタートアップ
🥣 Briefing
普及が進むAmazonの手のひら決済システム
先日、記事の無料公開を発表した『Quartz』から、一般普及への歩みを進めるアマゾンの新技術について紹介したい。
4月22日の記事によると、Amazonは子会社である食品スーパー大手Whole Foodsの実店舗において、昨年シアトル店にも導入した「Amazon One」をオースティンの一号店を含む6店舗に、追加設置すると報じられている。この「Amazon One」とは、手のひらだけで買い物ができるという、非接触型決済の最終形態ともいえるような技術で、専用デバイスに手をかざすと、手のひらの生体情報から個人を特定し、紐付けられたクレジットカードに自動で請求が来るという仕組みだ。
この技術はもともと、レジを通さずに商品を持ち去るだけで決済が完了する、同社の新業態「Amazon Go」に合わせてリリースされたもので、食品量販店だけでなく、2021年に開業した「Starbucks Pickup with Amazon Go」などにも採用されている。
現在、アメリカ国内16箇所の店舗と施設で実装されている「Amazon One」の今後に期待しつつ、過去に同社が顔の生体認証データを無断使用したとして訴訟を受けた事例から、今回の手のひらの情報の扱いについても気になる記事であった。
豆がなくても大丈夫、カカオフリーのチョコレートバー
ロンドンでカカオフリーのチョコレートバーを開発中「WNWN」は、同じ量のカカオ豆を使った場合と比較して、1キロあたりの炭素排出量が85%少ないと推定されている。WNWNによると、カカオの代替となるチョコレートバーのベースを作るために、チョコレートが約400〜500種類含むフレーバー化合物を発酵・焙煎し、「チョコレートによく似た味」の茶色のペーストを通常のチョコレートバーとほぼ同じ加工方法で作る。現在9月の本格的な発売に向けて、最後のテストを行っているところだという。
WNWN以外でもドイツでは、QOAがカカオフリーのチョコレートを今年のある時点で市場に出すために600万ドル調達。2020年に設立されたCalifornia Culturedは、研究室でカカオの細胞を培養する方法を考え、大手チョコレートメーカーが購入するタイプのカカオの代替品となるまでに成長。Voyage foodsは、今年中に3つの製品を市場に投入するため、約600万ドルの資金を調達。カカオフリーのチョコレートだけでなく、ナッツフリーのピーナッツバターや豆のないコーヒーなど、サプライチェーンに不安のある製品も手掛けていると『THINGTESTING』は伝えている。米国でピーナッツバターを、ヨーロッパでは大手製菓会社と共同ブランドで初のチョコレート製品を発売するそう。WNWNとVoyage foodsは、レシピを完成させるだけでなく、今後のレシピ開発を加速させるために自分たちが行っているすべての研究や発見を統合するプラットフォームを作る予定。
しかしこのような大きな野望には、疑問も残るところ。カカオの代替品を作るというのは、成功すればサプライチェーンへの影響は広範囲に及ぶ。例えば、ハーシー社のような巨大チョコレート企業が、農家からカカオの購入をやめて、新しい代替品に切り替えた場合、顧客にはサプライチェーンから奴隷制を根絶したと信用させることができるかもしれないが、そもそも搾取されていた人々の状況が改善されるわけでもない。上記にあげたブランドは、いずれもまだ初期段階にある。しかし製品が店頭に並び始めると、この問いに答えることがより急務となりそう。
No bean, no problem: Brands race to develop alternatives to chocolate and coffee
🎙 Podcast
中国市場のマーケティングの変化 / 中国の旅行グループチャット施策 / ブランドサイトを査定するスタートアップ
今週は、中国プラダのKOL戦略からの脱却、中国のグループチャットの面白い事例、ブランドのECサイトの査定をしてくれるスタートアップなどについて話をしました!
✏️ View
TikTokクリエイターがリアル店舗をオープンする理由
今までeBay、StockX、Depopなどでスニーカーや古着の売買を行なってTikTokでコンテンツを出すクリエイターたちがリアル店舗を出し始めている。TikTokクリエイターのエマ・ローグさんはニューヨークで「Rogue」という90年代のビンテージ品を扱う店舗をローンチ。2018年からDepop上でビンテージ商品を売買した後にTikTokで人気を高め、2021年6月に店舗をオープンすることを決めた。Rogue店舗の横には同じくTikTokで古着の売買を行なって人気になったマット・チューンさんが「Bowery Showroom」を立ち上げた。Grailed、ThredUp、Depop、StockXなど二次流通サイトがより多くの人が集まる中で、よりZ世代が好きな90年代ファッションアイテムのキュレーションされた店舗を作ることを目指している。もちろんニューヨークの店舗スペースは高く、毎月$5,000以上はするが、ビンテージ商品のマージンは高く、インフルエンサーとコラボしたりイベントを開催することで売上を作れている。ただ、この90年代のノスタルジアは主にニューヨーク、LA、大都市で人気な傾向があるので、上手く地域ごとのテイストに合わせた店舗開拓が必要になるかもしれない。
Editor's View
この記事は実は二つ大きな流れを表している。一つはオンラインでのユーザー獲得が難しく、非効率になる中でのオフライン店舗の重要性。もう一つはクリエイター自身がキュレーションするショップを作るトレンド。過去のCEREAL TALKポッドキャストでも話したが、キュレーションの進化によってブランドより個人のライフスタイルを好む時代になると、クリエイターが自分自身のブランドを立ち上げて販売するだけではなく、自分のテイストを収集した店舗で販売する流れが来る。実際にDepopはそのような機能があるが、今後は二次流通だけではなく、クリエイターは好きなブランドの商品を自分の店舗に挙げてアフィリエイト収入をもらえる、キュレーション店舗をオンライン上で作れるようになるはず。今オフラインでそれが一部行われている理由はDepopなどだと自分の世界観が出しにくく、体験のコントロールが出来ないからだと思われる。ー宮武
📰 News
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