#69 ルイ・ヴィトンのセレブリティ戦略の変遷
PinterestはなぜThe Yesを買収したのか、キノコの菌糸由来の新素材モデル発表 土屋鞄 x Myloの発表までのお話、『ユーフォリア』に実は登場してるD2Cブランド
🥣 Briefing
ルイ・ヴィトンのセレブリティ戦略の変遷
ヴィトンは過去4年間、レッドカーペットに登場して話題性を高めることに成功していたが、アメリカの映画産業の影響力が薄れ、ハリウッドの授賞式を見る人が少なくなるにつれ、戦略を転換しているように見えると『BoF』は伝えている。ヴィトンは、セレブリティの着こなしに焦点を当てたアプローチで成功を収めてきた。そして今、TikTokのスターやヴィトン初のインド人アンバサダーとしてボリウッド女優を起用するなどより幅広くその戦略を広げている。
戦略の成功の背景にあるものは、巨額のマーケティング予算と強力なスカウティング・システム、デザイナーやスタイリストのセレブリティとのコミュニケーション濃度の高さ。調査会社MediaRadarによると、2022年の第1四半期、アメリカだけでも、ルイ・ヴィトン、シャネル、ディオールが印刷物とオンライン広告に合計4400万ドルを費やしている。多額のマーケティング費用には、新しい才能を発掘する機能し、これから伸びるであろうスターにも多くの賭けをすることができる。セレブリティとの交流関係も特徴的で、フレグランスの広告は何十年も続くことがあるが、業界関係者によると、こうしたパートナーシップを本物だと感じさせるために、彼らの多くが住むロサンゼルスで時間を過ごし、スタイリストとも親交を深めているそう。
プライベートでは1対1のミーティングを行うだけでなく、オスカーのプレイベントにスポンサーをするなどメディアに取り上げられるイベントを演出している。ヴィトンは、商品だけにとどまらず、より大きなブランド・パッケージとしてセレブリティを包み込んでいる。セレブリティと商品とブランドがここまで強く結ばれる基盤をつくれたこともヴィトンがトップブランドだと言われている理由の一つなのかも。
PinterestはなぜThe Yesを買収したのか
今月2日、ビジュアル探索ツールとして知られるPinterestが、ショッピングプラットフォーム「The Yes」の買収を発表した。The Yesとは、個々人の好みに合わせたショッピング体験が強みのECサービスで、独自のAIがユーザーの行動履歴を分析、一人ひとりの体型、好みのスタイルやブランドに合わせた提案を可能にする。
今回の買収はPinterestがかねてより掲げていた、ショッピングツールとしての機能改善を目的としている。The YesのAIによる機械学習をはじめ、決済機能、マーチャントとの在庫情報の統合といったテクノロジー面はもちろん、ブランドとの関係性、ショッピング分野における専門知識などの豊富な経験値にも期待しているようだ。The Yesのサービスは当買収ののちクローズ予定で、メンバーはPinterestチームに移行する。中でもファッションECの古株であり、2018年にThe Yesを立ち上げた創業者のジュリー・ボーンスタインは、PinterestのCEOベン・シルバーマン直属の元、同社全体のショッピング戦略を指揮する予定だ。
購入体験を強化することで、ブランドサイドとしては広告の出稿先としての期待も膨らむ。Pinterestは特定のブランド名で検索せずに回遊するユーザーが大半であるという特性上、直接認知のない新規顧客にもアプローチしやすい。5月末からは日本においても広告サービスを開始しており、ベイクルーズなどの企業がすでに検証を開始している。果たしてPinterest経済圏は今後どれだけの成長曲線を描けるのか、消費者としてもブランド企業としても気になるところ
Pinterest to acquire THE YES, an AI powered shopping platform for fashion | Pinterest Newsroom
🎙 Podcast
キノコの菌糸由来の新素材モデル 土屋鞄 x Myloの発表まで
やっとリリース!ということで、バイオテック企業 Bolt Threads社が開発したキノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材「マイロ(Mylo™️)」の新モデルを発表した土屋鞄製造所ですが、公開までの思いや実際にUSオフィスに行って見てきた話などしています。
✏️ View
『ユーフォリア』に実は登場してるD2Cブランド
ラッパーのドレイクが製作総指揮を務める、ゼンデイヤ主演のHBOシリーズ『ユーフォリア Euphoria』。現代社会でさまざまな問題を抱えながら生きる高校生たちの姿をスタイリッシュに描いた若者向けドラマで、『ゲーム・オブ・スローンズ』に次ぐ視聴者数を記録しました。最近やっと最新シリーズまで見終わったのですが、劇中にD2Cブランドが何度かカメオ(?)出演していて「あっ観たことある…!」という発見がありました。登場していたのは、シリアルブランド「OffLimits」とハイビスカスウォーター「RUBY」(どちらのブランドサイトもイケてます)。凄いのが、OffLimitsが2020年8月頃、RUBYは2021年5月頃にリリース、Euphoriaのシーズン2の撮影が始まったのも同じ5月。本作では、かっこい古着や若手のブランドの着用も話題になったのですが、” 尖った”最新フードブランドも最速で取り入れているあたりすごいなと…。
どこを切り取っても絵になるビジュアルやキャッチーなセリフでTikTokなどでミーム化され、作品を観ていない人でもキャラクターは分かるというくらいトレンドになっていたり、話題にするのがとにかくうまい。今回の新興ブランドをセットに取り入れるのもニッチで熱量の高いコミュニティに刺さる良い施策でもあるのかなとも思いました。最近では、作品のメイクアップアーティストのドニエラ・デイビーと制作のA24と共同でコスメブランド「Half Magic」もローンチ。ドラマという枠組みだけでは収まらないコンテンツ性の高さを感じます。——草野
euphoria | promise season 1 | official teaser | HBO - YouTube