🥣 Briefing
快適な買い物体験の影に潜む現代病「Shopping Addiction」
オンラインショッピングはもちろん、手をかざすだけで決済、広告上でそのまま購入完了までできるなどなど、私たちのショッピング体験は年々、簡単かつスムーズになる一方だ。他方で、購買欲が抑えられず過剰に買い物を繰り返してしまう、通称「Shopping Addiction(買い物依存症)」が社会問題となっているのはご存知だろうか。100年以上前から確認されているこの症状だが、ここ最近の症例増加のタイミングとECの登場がほぼ一致していることからも、リテールテックとの因果関係は否定できない。
『BoF』ではこの処方箋として、必要以上の買い物を減らすソリューションを紹介している。中でも面白かったのが、Shopping Addiction Calenderと呼ばれるアプリだ。買い物を我慢する期間に応じて、節約できた金額を可視化してくれる基本機能に加え、どうしても衝動が抑えられない時にアプリ内の「Panic Botton」を押すと、あらかじめ設定した友人に連絡がいくようになっている。他にも、そもそも自分がよく買い物をしてしまうサイト自体を見れないようにするブラウザ拡張機能BlockSiteなど、そのアプローチは多岐にわたる。
リテールテック普及の影に潜む社会問題を取り上げたが、あくまで便利すぎは毒だから古き良き時代に戻ろうという話ではなく、便利なテクノロジーをいかに乗りこなすかが現代人に与えられた命題なのだと思う。そして、その手綱となるのが今回紹介したようなソリューションなのだろう。
サステナブル・ファッション、信頼性の危機?
Quartzの調査によると、H&Mは製品に使用された素材の環境負荷に関するデータを偽っていたことがわかった。H&Mはこれを受けて、Higgサステナビリティ・プロファイルをオンラインストアからすべて削除したと『BoF』や『GLOSSY』は伝えている。
Higgサステナビリティ・プロファイルは、数年にわたって世界の小売企業やサステナビリティの専門家とともに共同で開発されたもの。対象となる欧州及び米国のオンラインストアの各製品に、その製品を作るために使用された素材の環境への影響に基づいてそれぞれスコアが付けられているラベルのこと。スコアは 「標準値」から「レベル3」まであり、各製品には、 水の使用、 地球温暖化、 化石燃料の使用、 水質汚染などへの影響に関する詳細なデータも表示される。Quartzは、何百もの製品が実際よりもサステナブルであるかのように誤って表示されていることを発見。実際の製品で、「アントワネット」というドレスは、水の使用量が基準値より20%少ないと公表されていたが、実際には基準値より20%多く使用されていたそう。
ノルウェー消費者庁は、このHiggサステナビリティ・プロファイルは誤解を招くものであると指摘した後、開発した250以上のファッションブランドで構成されるSustainable Apparel Coalitionが、Higgサステナビリティ・プロファイルの使用を完全に一時停止するという結果を招いた。
ファッション業界は、ブランドが持続可能性の主張を行うことができるかという点で、ほとんど規制がされていない。食品でいうと、「オーガニック」や「ケージフリー」のラベルを付けるには、一定の基準を満たす必要があるFDA(食品などを取り締まるアメリカの政府機関)とは異なり、アパレルブランドは持続可能性を謳うことができる。
環境負荷を「見える化」することによって、顧客がより多くの情報に基づいた購入判断をしてもらうことを目的としているはずなのに、これで信頼を失ってしまうのは悲しいことかもしれない。
H&M's labeling controversy highlights the persistence of greenwashing
✏️ View
EC事業を成功させるためには服をコンテンツとして扱うこと
今までブランドはユーザーをサイトに引き寄せられたのはメール通知やプロモーション、そして新規プロダクトを提供することだった。ファストファッションはこのモデルを加速させたからこそより中毒性のあるショッピングが意見を提供できた。その代表例になるのが毎日数千点と新規商品を出すSHEIN。SHEIN以外にもリセールアプリのThe RealReal、Grailed、Poshmarkなどを見ても、新商品の見せ方を調整していて、ユーザーが毎日数回アプリを見てくれるように新商品を表示している。この新商品はSNSの猫の写真と同じように、フィードのコンテンツとして扱われている。ファストファッションより環境に優しいと言われているリセールアプリでもアプリの中毒性を作るために新しい在庫を常に探せる環境を作るのを重要視している。Grailedなどは宝探しの気分を提供しようとしていて、毎日朝イチで見てくれるユーザーもいる。結果としてショッピング体験がInstagramフィードと似たような感じになり、リアル商品でありながら、デジタルメディアとして見るのも良いかもしれない。
Editor's View
ドロップ文化やコラボもファッション商品をメディア化していることに近いかもしれない。ハイプや話題性を生み出せるのを考えないといけない時に、ファッションブランドやEC事業主は自社のプロダクトの生地や使い道だけではなく、どう言うリアクションを生み出すのかなども考えないといけない。しかも一つのプロダクトのリアクションではなく、商品ポートフォリオとしてのリアクション、そして一つのプロダクトが他のプロダクトにどう影響を与えるのか。仮に全く売れない商品でもサイトに引き寄せられる力がある商品はマーケティング的に考えると良いかもしれない。常に新しい商品が大量生産されている中、ユーザーのアテンションと信頼をどう選られるかの勝負になる中で、自社プロダクトをメディア化させるのは一つの良い戦略かもしれない。ー宮武
📰 News
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