#74 カスタムスキンケアブランドの次なる展開
プライムデーの裏で進むAmazonの新施策、リテールの未来が分かりにくくなっている、ニッチフレグランスの広がり、Shopify Appのアグリゲーターはサステナブル?
🥣 Briefing
カスタムスキンケアブランドの次なる展開
カスタムメイドのスキンケア市場はよりパーソナルなものとなっており、特許技術を駆使して優位に立つブランドが増えていると『BoF』は伝えている。
スキンケアブランドは、赤ら顔、ニキビ、色素沈着など、考えうるほぼすべての肌の悩みに対応する製品を販売しているが、新しいブランドはさらに一歩踏み込んで、顧客一人ひとりの肌に合わせた製品を作っている。
パーソナライゼーションは、ヘアケア市場でスタートした。Function of BeautyやProseなどのブランドは、顧客の購入前アンケートの記入結果に基づいて、何兆通りもの処方の製品を作った。スキンケアではこのコンセプトが知られていなかったわけではないが、ここ数年、複数のブランドが1分間の診断クイズやオンライン診断にてパーソナライズ製品を顧客に割り当て、発売している。スキンケアやヘアケアをカスタマイズするビューティーブランドは、美容業界において一般的になってきている。
情報が多様化し、選択肢が増え続ける中でカスタムできるスキンケアブランドは、消費者の個人的なスキンケアの悩みに応え、多くの製品を試して探す必要がないものを提供することを約束している反面、店舗での販売が難しく、テクノロジーを駆使した製造工程はコストがかかるなど、ブランドのスケールアップには難しさがある。「自分に合う商品を選べる」が当たり前となった時、プラスアルファで求められることは各ブランドの成長に伴い、”特許”を取得し、それを打ち出し、いかにして競合との差別化を図るかというところ。これは一種スピード勝負のようなところもあり、特許を取ったもの勝ちとも言える。
これから先規模が拡大すれば、パーソナライズ・スキンケアブランドは、消費者層の肌タイプ、好み、懸念、課題に関する洞察やデータをかなり強固なレパートリーとして持つようにると思うが、そのデータを活かした各ブランドの売り出し方や動きが気になるところ。
プライムデーの裏で進むAmazonの新施策
先週の火曜水曜と、プライム会員限定の大型セールであるAmazoプライムデーが開催された。皆さんは何かお気に入りを見つけられただろうか。これに関連して今週は、年に一度の大売り出しに沸くAmazonが、その舞台裏で進めている新施策を2つ紹介したい。
①Alexaの音声検索をアップデート
今月12日、Amazonがマーケティングツール「Uberall」と提携し、Alexaでの検索精度を向上させると発表した。Uberallは、Google My BussinessやFacebookページなどの企業情報を一元管理できるソフトで、Amazonはマクドナルドはじめ135万の小売パートナーを持つ同社と提携することで、より正確で最新の店舗情報をAlexaでお届けできると説明している。UberallのCEOの話すところによると「グルテンフリーのピザが食べられて、Wi-fiがあるイタリアンレストランは?」のようなニッチな質問にも答えれれるようになるだろうとのこと。
②動画作品内に商品を表示できる特許を申請
宮武さんのツイートでも紹介されていたが、Amazonは動画コンテンツ内に自由に商材を表示できる技術を特許申請した。すでに、Amazonオリジナルの人気ドラマThe Boys内で登場人物が缶飲料水のD2CブランドLiquid Deathを飲む場面を挿入するなど、作品内にプロモーションを織り交ぜる例は増えているが、この技術が採用されると、各視聴者に合わせて飲む飲料のビジュアルを変更するといったターゲティングを動画内で実現することができる。この施策は、成長率がついに横ばいになったPrime会員数の伸び悩みを受けた、一人当たりの顧客単価を上げる思惑が隠されている。
他にもWhole Foodsの店舗に画面付きのスマートショッピングカートを導入することを発表していたりと、その手数の多さと革新性には舌を巻くばかりだ。ただそんな百戦錬磨のテックジャイアントも百発百中とはいかない。Instagramの対抗馬としてリリースしたAmazon Sparkは3年前にひっそりとサービス終了。著名人を起用したLive配信もアクセス人数が振るわず、理想の結果とはいかなかったようだ。ただ彼らのトライアンドエラーの数々はきっと、成功失敗問わず多くの業界企業にとってベンチマークになり得るだろう。
Uberall partners with Amazon Alexa to keep biz data up-to-date
🎙 Podcast
今回は、Briefingコーナーでも紹介しているAmazonの新しい施策についてや、香りの新しい体験、Shopify Appのアグリゲーターの可能性について話しました。
✏️ View
リテールの未来が分かりにくくなっている
過去数年前からアメリカではデパートやモールの人気が下がっていると様々なエキスパートが語っている。実際に今までのプレイヤーであるSearsなどJ.C.Penneyの店舗に入る人は少ない。ただ同時にモールに新しいブランドも入っている動きも出ていて、場所によってはモールに訪れる人数が増えている調査もある。Placer.ai調査によると、フィラデルフィア周辺のモールはコロナ前と同じぐらいの客数になっているとのこと。同時にヘッジファンド及びモール運営グループでJ.C. Pennyなどを抱えるSimon Property GroupはリテーラーのKohl'sの買収オファーを出した。買収するということはこれから成長できるからと期待しているはず。同じタイミングで経済不況の要素が出始めて、インフレによって家の所有率も下がると予想されている。そんな中でメタバースみたいな技術が普及すると、モールそのものが必要なくなるのではないと言われている。様々なデータポイントを取ると、リテールの将来は今まで以上に分かりにくくなっているのは明らかだ。唯一の共通点がエンドユーザーであり、そのエンドユーザーは良いブランド、プロダクト、イノベーションを望んでいること。
Editor's View
この記事に書いてある通りで、リテール企業は明らかに向かうべき方向性がなくなっている。色んなトレンドが矛盾している。モールの人気が下がっているはずなのに一部では上がっていたり、サステイナビリティが重要視されるはずなのにファストファッションがより人気になったり、D2C化する大手リテーラーがいながらD2Cブランドがリアル店舗や卸事業に投資している。CEREAL TALKでは色んなトレンドや成功・失敗事例を追っているが、リテール業界では非常に難しいタイミングだと思っている。例えば過去数年前から多くのGlossierの卒業生が自らD2Cブランドを作っているが、どの会社もGlossierと同じコミュニティを作れていないと認めている。これはタイミングの問題なのか、ユーザーの行動シフトによって反応が変わっているのかは定かではないが、Forbes記事にも書いてあるように、その回答はユーザーに聞かなければいけない。そう考えると今まで以上にどうブランドがユーザーとコミュニケーションをとるのか、そしてユーザーが好むカルチャーは何なのかを知る必要性があるのかもしれない。ー宮武
📰 News
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