#76 身につけられる微生物?バイオクチュールの台頭
宇宙輸送業を手掛けるSpaceX が子供向けおもちゃを作る理由、コマース企業は不況をどう乗り越えるか、若者のバーキン「Telfar」がどう希少価値を作るか、EC特化型自動化ツール「Alloy」の成長から見るテックスタックの重要性
🥣 Briefing
身につけられる微生物?バイオクチュールの台頭
サスティナブル素材のニットアイテムで注目を集めるファッションブランドRubens(ルーベンス)が、微生物を使った「バイオクチュール」アイテムのコレクションを発表した。『VOGUE BUSINESS』は、このコレクションはロンドンのコンセプトストアMachine-Aとバイオテクノロジーの新興企業Post Carbon Labと共同で制作したと伝えている。
バイオクチュールとは、バクテリアなどの生きた微生物を使って衣服や製品をデザインすること。2012年頃、ブルックリン在住のファッションデザイナーのプロジェクトから生まれた造語。過去、MITメディアラボのプロジェクトでは体温や汗に反応して微生物を混入したテキスタイル自体を作ったり、元スポーツウェアデザイナーのロージー・ブロードヘッドが治療用衣類をデザインする際に使用したこともある。
「代替素材」という点では菌糸を使った代替レザーと混同されがちだが、大きな違いは「活動中」と「冬眠中」の2つの状態があること。バイオクチュールを制作するデザイナーはアイテムに使用する微生物の状態をこの2種類から選ぶことができ、それによって衣服の外観や手触り、ケア方法は変わる。
RubensとPost Carbon Labはコレクションのために、水、日光、二酸化炭素を吸収して酸素を作る植物のように活動するバクテリアに着目した。
Rubensは認証を受けたオーガニックコットン、その他のアップサイクル素材を使って作品を作った。プロセスは非公開だが、生地に使用する際に特殊なコーティングを施して、このバクテリアが結合できるようにした。限定生産されたアイテムはすでに完売、Rubensはファッションのバイオクチュール運動の最前線にいる。
近年バイオクチュールは、素材の革新がどこまで可能なのか注目されており、代替素材の次の進化の可能性を示している。微生物と触れ合うというユニークな体験と大胆なデザイン、そのコンセプトとストーリーは消費者を魅きつけている。その一方で、購入後も衣服に一定の湿り気を与えるケアが必要であったり、人体に影響がないのかという懸念の声も。後者については、バクテリアが付着した衣服は、肌や健康に良い影響を与える可能性があるという研究もあるようだ。
まだまだ未知の部分が多く、使用やメンテナンス、生産コストや輸送方法も含めてさらなる研究が必要な発展途上の分野。バイオロジックを本格的に軌道に乗せるには、博士課程の学生やデザイナー、研究者が作ったプロトタイプを製品化を目指し、チームの規模を拡大するための投資がキーになってきそう。
Living, breathing, wearable plants? Inside the rise of biocouture
宇宙輸送業を手掛けるSpaceX が子供向けおもちゃを作る理由
宇宙と聞くと、なぜだか無性にワクワクして、どんな大人も子供心を思い出す。そんな童心をくすぐるプレスリリースを今週は紹介したい。
7月20日、おもちゃメーカー「Mattel(マテル)」が、民間宇宙産業をリードするSpaceX 社と、複数年に渡るパートナーシップ契約の締結を発表した。日本人には若干聞き馴染みの薄いMattelだが、バービー人形やカードゲームのUNOなど、誰もが一度は耳にしたことのある名作玩具を多数販売する老舗メーカーだ。一方SpaceX は、ニュースの絶えない男、イーロン・マスク氏をトップに据え置く航空宇宙企業で、自社ロケットを用いた宇宙輸送サービスや通信衛星の開発を手掛けている。Mattelは今回の契約ののち、働く車のおもちゃシリーズにSpaceX のインスパイア製品を仲間入りさせるほか、コレクター向けの販売サイトMattel Creationsにて関連グッズを展開する予定だそうだ。
子供向けおもちゃ企業と、国家機関や法人向けの宇宙輸送企業のコラボという、異色の組み合わせに思わず目の止まったこのニュースだが、実はマスク氏とMattelは過去にも共演歴がある。EVブランドTeslaのサイバートラックをモデルにしたラジコンカーをマテルは一昨年発売している。また、SpaceX が自社サイトで一般消費者向けにアパレル製品を販売していることから見ても、今回のパートナーシップはそこまで意外な組み合わせではないのかもしれない。
当契約の裏にどんな意図があるのかは定かではないが、現状、国および企業向けに宇宙輸送のインフラとして機能するSpaceX が、一般消費者、特に未来のステークホルダーになりうる子供たちに宛てた商品を打ち出すことで、今後長期的に拡大を見据える宇宙旅行事業に向けて、着々と刷り込みとブランディングを進めているように私の目には写った。今回の例のように、メインの顧客層でないターゲット向けの商品をわざわざ販売する背景には、遊び心だけでなく、したたかな認知戦略が隠されているとも取れる。
Mattel Announces Multi-Year Agreement with SpaceX to Produce Toys and Collectibles
🎙 Podcast
コマース企業は不況をどう乗り越えるか、若者のバーキン「Telfar」がどう希少価値を作るか
今回は、レイオフのニュースも増え、市場の悪化がしている中『TechCrunch』が紹介しているコマースブランドが不況を乗り切る方法について、そして、若者のバーキンと呼ばれるTelfar(テルファー)が希少価値を作りつつ、新しい顧客に届けているか『Retail Dive』の記事を読み解きながら話しました。
📝 note
EC特化型自動化ツール「Alloy」の成長から見るテックスタックの重要性
CEREAL TALKでは、noteでも発信しています。今回は、「Alloy」の記事をピックアップ。Alloyはこれまで人力で対応してきたEC周りの業務を効率化させる自動化ツール。D2Cブームを経てテック思考のEC事業者も増えてきたからこそ生まれつつある新たな潮流と、その需要を支えるAlloyについて解説しています。
EC特化型自動化ツール「Alloy」の成長から見るテックスタックの重要性|CEREAL TALK(シリアルトーク)|note
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