#9 ファウンダープロダクトフィットの大切さ
キュレーションこそが新しいディスカバリー、D2Cブランドがウォルマートと提携する理由、Glossierの映画予告風マーケティングが秀逸、D2C 3.0の時代
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
ファウンダープロダクトフィットの大切さ
「Founder-Product-Fit」の重要性、つまり創業者とプロダクトのフィットが大切だということがD2Cブランドでは特に言われている。これを達成している企業として知られているのが低アルコールドリンクブランド「Haus」だ。良いコンテンツマーケティングではオーセンティックなブランドを作ることが大事で、それを作るのにFounder-Product-Fitが必須になっている。逆にFounder-Product-Fitが無ければ、ブランドのストーリーはただのコピーライティングにしかならない。Haus創業者の夫婦だ。妻のヘレナ・プライス・ハンブレヒト氏は、Airbnb、Dropbox、Facebookなどでクリエイティブなプロジェクトを担当したり、写真家として活動していた。一方夫のウッディ・ハンブレヒト氏は、家族が元々ワインを作っていて、自分の農園を持っていた。そんな二人が、ベルリンの旅行中に、異なる飲みの文化があることを気づいた。彼らは酔うために飲んでいるのではなく、関係性を深めたり「今を生きる」ために飲んでいた。そして飲むのは食前酒、特にアメリカーノが多かったのに気づいた。Hausはヨーロッパの伝統的な食前酒にモダンなテイストを入れ込んでいるプロダクト。Hausのプロダクトとヘリテージを感じさせるウッディ氏とは別に、ヘレナ氏はブランドのバリューコミュニケーションと顧客アピールに強みを持っていた。Haus以外にRecess、Rowing Blazers、Topicalsなども創業者のストーリーがあるからこそ、ブランドのコピーやデザインが響くようになっている。今の顧客は消費するプロダクトに対して真実を求めている。ちょっとカッコいいデザインではなく、10年後もサポートできるブランドを探している。新しいブランドは歴史がない中で、創業者にそのヘリテージが求められる。それを見せるのに最も適しているのは自分たちのオーセンティックなストーリーである。今週のポッドキャストでもご紹介しているのでぜひ聴いてみてほしい。
キュレーションこそが新しいディスカバリー
オンラインリテール業界では、キュレーションサービスが増えている。一時期流行っていた箱に複数のプロダクトをバンドルしたサブスクサービスがまた人気になっている。毎日のように新しいブランドが立ち上がっている中、品揃いが多いオンラインマーケットプレイスやECを見ても何を購入するべきか分からなくなっている中、キュレーションはユーザーのディスカバリープロセスにシンプルにしている。大手ブランドのPepsiも「Pantry Shop by PepsiCo.」という名前で複数のプロダクトをまとめて販売。これはユースケースを明らかにしながら、今までユーザーが知らなかったブランドなどを入れてよりブランドを好きになってもらうきっかけ作りも行っている。他にもPop Up Grocerは最近大型百貨店チェーンのノードストロームとコラボし、PopUp Grocerの創業者が選んだ150個の飲食プロダクトをキュレーションした。さらにインフルエンサーを活用する事例も増えている。Bubble Goodsでは数名のウェルネスエキスパートとコラボしてエキスパートが選ぶプロダクトをサイトに披露したり、ギフトガイド・ギフトボックス領域だとインテリアデザイナーとコラボして商品を選ぶことを行っている。
The Rise Of Curation: How Online Retailers Are Cutting Through The Noise - Forbes
D2Cブランドがウォルマートと提携する理由
小売大手ウォルマートやターゲットなどに行くと、実はD2Cブランドがよく並んでいる。ミドルマンを避けて直接顧客と繋がるコンセプトで立ち上がったはずのD2Cブランドはオンライン広告の値段が上がっている影響で、最近オフラインでの販売が増えているのだ。自社店舗を立ち上げるブランドもいれば、ポップアップや大手リテーラーと提携してオフラインで商品販売を行うブランドも出てきている。ターゲットは2016年にHarry'sと提携してから、今ではFunction of Beauty、Lively、Native、quipなど様々なブランドと提携。さらにカテゴリー別のリテーラー、特にWest ElmやCrate and Barrelなどホームインテリア系のリテーラーはD2C企業と提携するケースも増えている。West Elmは観葉植物D2CのBloomscape、Crate and Barrelはベッドシーツなどを販売するParachuteやクックウェアブランドのCarawayと提携。
ウォルマートは過去にD2Cブランドの買収を多く行なっていた。結果として買収したブランドを最近売却したケースもあったが、社内にデジタルマーケティング戦略やノウハウを取り入れるのが非常に重要だったと思われている。また、大手はノウハウ以外にD2Cブランドが抱える若手層の顧客のトラフィックを獲得できるのも大きな提携する理由となる。そして特にターゲットはプライベートブランドをD2Cっぽく見せているため、そこに顧客を誘導させるためにD2Cブランドと提携しているとも思われている。ターゲットはAwayと非常に似ているOpen Storyというスーツケースブランドを立ち上げたり、若手層が好む明るい色合いのプロダクトを使って初年度で$1Bの売上を達成したアクティブウェアブランドのAll in Motionを店舗内でプロモーションしている。Walmartも直近ではプライベートブランドの立ち上げに注力している。
What big-box retailers have to gain from DTC brands | Retail Dive
🎙Episode 04: D2C 3.0の時代
今回は、D2C1.0から3.0の変化を振り返りつつ、ファウンダープロダクトフィットやヘリテージをどうやって作っていくか💃 、D2Cトレンドがラグジュアリーに浸透する流れ💍、などについて話しました🔥 (Apple Podcastの方はこちら)
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Glossierの映画予告風マーケティングが秀逸だった
コスメブランドGlossierが、自社プロダクトのマスカラ「Lash Slick」のキャンペーンを実施。サイトに寄せられた良かったレビューをストーリーの元とした映画予告風動画「Lash Slick:The Movie」を公開した。面白いのが、映画のポスターをニューヨークやロサンゼルスなど9つのインディーズ映画館のポスターボードや看板で野外広告を出したこと。コロナ禍で営業が厳しい映画館に対して、ポジティブな動きとしても注目された。2020年第4四半期の米国野外広告協会(OAAA)の調査によると、米国の成人2,058人の45%がパンデミック以前よりも野外広告に目を向ける人が増えたそう。
Editor’s Note
ユーザーからのUGCコンテンツを活用し、さらにローカルコミュニティへのサポートに繋げるキャンペーンは面白いなと思いました。ただの野外広告ではなく、架空の映画ポスターというGlossierを知っている人なら写真を撮ってインスタのストーリーにあげたくなるような面白いクリエイティブでもあるのも秀逸ですよね…。Morning Brewの取材によると、コロナ禍においての新しいメディアアイディアを考えている時に出てきたアイディアだそう。映画もロマコメっぽいものからフィルム・ノワール風、アニメなどある意味これまでとは異なるクリエイティブな気もしますが、同時にGlossierらしいユーザーコンテンツであり、多様性やポジティブなメッセージングは残されていてとても好感を持てる広告でした。短尺動画の時代に、ストーリテリングをギュッと凝縮させることができるフォーマットとして「映画予告風」というのは面白いかもしれません。——草野
Why Glossier Used Empty Movie Theater Marquees for its Latest Campaign - Morning Brew
📰 News
元GlossierのCOOが立ち上げたD2Cコングロマリットブランド「Arfa」がヘッドレスコマースソフトウェア「Chord」にピボット - TechCrunch
英国紳士服の聖地「サヴィル・ロウ」はNYにもある - Sprezza
アパレルブランド「Anthropology」がPinterestでデジタルカタログをローンチ - Pinterest
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