リテールテック起業家に聞く2024年業界トレンド予想 #150
今週のニュースレターは特別号!FABRIC TOKYO森氏、Yoom波戸崎氏、コマースプロデューサー川添氏、StoreHero黒瀬氏、MMOL Holdings代表/フラクタ創業者河野氏、Stack代表ゆずしお氏など2024年リテールトレンド予想を日本の起業家の方々にも答えていただきました。
🌠 Retail Trends and Predictions for 2024 🌠
今週のニュースレターは特別号! 今回は、#147に公開中したCEREAL TALK編集部の2024年リテールトレンド予想を日本の起業家の方々にも答えていただきました。(FABRIC TOKYO森氏、Yoom波戸崎氏、コマースプロデューサー川添氏、StoreHero黒瀬氏、MMOL Holdings代表/フラクタ創業者河野氏、Stack代表ゆずしお氏)
上がりに上がった米国金利が2024年はさすがにそろそろ調整が入り利下げ局面に入ると考えられる一方で、日本は逆に利上げが予想されるため、結果的に春頃から円高になっていくのではないでしょうか。執筆時点(1月22日現在)だとドル円相場は148円ほどですが、年内に135円を割ってくるとここで予想しておきます。笑
そうなると原材料の仕入れなどにおいてコストメリットが高まり、利益率の上がる小売企業も増えそうです。リテール関連スタートアップに投資するVCによるリスクマネーが日本で突然増えることは考えられないため、引き続き損益分岐点を突破し、利益率を高められる企業体質が重要になってくるため、本当にそうなったら企業にとっては追い風なのかなと思います。一方で損益分岐点を超えられない企業の淘汰も同時に進み、倒産とともに合併・売却も増え、M&Aを行いたい企業にとって機会は増えると思います。
最後に、マーケティングチャネルは引き続きやはり増える傾向には無さそうなため、既存のチャネルの最適化がキー。近道を探したくなりますが、結局は日々の地道な努力が重要であると感じます。
・ Yuichiro Mori(@yuichiroM) / X
・ オーダーメードのビジネスウェアブランド FABRIC TOKYO
・ 【過去回】#39 2021年米国リテール振り返り w/FABRIC TOKYO 森 雄一郎さん (Apple / Spotify)
日本語の壁、終わりの始まり
生成AIによって下記のような翻訳周りの機能強化が急速に進む。
Web上サイトの多言語対応サービス(Weglotなど)が進化し、どの言語でもこれまでよりも遥かに適切な翻訳で多言語対応ができるようになる
ZoomなどのWeb会議サービスでリアルタイム翻訳が開始され、言語に捉われずセールスができるようになる
マニュアルなどの記事コンテンツが自動翻訳され、多言語でのコンテンツ生成コストが大幅に低下する
IntercomやZendeskでのサポートツールやメールでの文章が自動で翻訳され、返信文も自動生成されるようになることで、グローバルでのサポートコストが低下する
このような翻訳の進化によって、これまで日本語が壁になっていた領域でも、グローバルサービスが劇的に参入しやすくなり、幅広い領域で海外サービスとの競争が必要とされる。
特にSaaSなどのソフトウェア分野はバックオフィスサービスなどの国ごとの法の違いに守られている領域などを除き、あらゆる領域で今後海外サービスが参入してくることへの対応の開始を求められる。
GPTの進化予測
GPT5の登場
token数の拡大(30〜50万tokenまで拡大する?)
レスポンス速度の改善(上位モデルでも現在のGPT3.5-turbo並のレスポンス速度まで改善)
長期記憶の搭載
SharePoint、GoogleDriveなどのSaaSツールとの連携
音声での滑らかな会話の実現
画像理解の精度向上
特化型AIアシスタント市場の急速な立ち上がり
昔のインターネットの時代にYahoo、Googleのような汎用型サービスと同時に、Indeed、SUUMOなどの特化型メディアが拡大したのと同様に、OpenAIのような汎用型のAIアシスタントの市場と同時に、職種や業種特化型のAIアシスタントサービスが一気に増加、市場が急速に成長する。特に下記のような領域の特化型AIアシスタントが2024年中に多く登場してくる。
マーケティング(コンテンツ作成、バナー作成など)
セールス(メール生成、議事録・コールログの分析、SDR対応)
HR(採用対応、スカウト対応など)
データ分析
開発(コード作成支援、テスト自動化)
Google検索結果の順位ロジック大幅変更
生成AIによってコンテンツ生成の障壁が下がり、大量のAI生成コンテンツが生まれるため、そのコンテンツをGoogleがどのように評価するのかは分からないが、何かしら大幅なロジック変更が想定される。
大手SaaS企業は生成AIによるアップセル特需
生成AIはSaaS企業にとって最強のアップセルオプションとして利用される。そのため顧客数が多い企業は既存企業へAI機能を販売するだけで大きく売り上げの増加が見込めるため、このアップセル戦略が多くの大規模SaaSで実施されると思われる。
特にコンテンツやデータを保有するSaaSにとってはかなり有効。
・ 波戸崎 駿@Yoom(@hatomru7) / X
・ コマース領域までカバーしたワークフロー自動化ツール Yoom
TRENDS 2024 メーカー(SPA型を除く)におけるデジタルコマース人財の獲得・環境改変
2023年後半に転職活動をして見えた仮説は、現時点の国内メーカーの多くは外部人財の積極採用が進んでおらず、内部人財でデジタルコマースの推進をしてきたということ。10-15年前の店舗小売企業のEC・オムニチャネル部門に近い状況だと感じた。D2CやB2B・B2C EC強化の概念は実装されていることも見受けられたので、2024年以降は本格的に高度なデジタルコマース人財の獲得に乗り出してくるだろう。また、店舗小売における組織構造やオムニチャネルの進め方と似ているところがあり、製造や営業の部門の立場が強いため組織のハレーションを起こさずに、戦略だけでなく戦術・実務までカバーできる人財が求められると考えられる。いうまでもなく、国内事業者における外部支援依存型・デジタルコマース人財不足(争奪戦)は続いている。その観点では、外的な圧力によって外部人財の獲得や活かすための制度改編・子会社設立や内部人財の抜擢・リスキリングといった現実的な環境へのテコ入れも進むだろう。
川添 隆(ゾエ)“EC事業•DXのカルチャーフィット”を促進する人(@tkzoe) / X
オペレーションのAI化が進む
カスタマーサポート、広告クリエイティブに限らず、数値で判断できる施策についてはAIによる判断が増える。例えば、オートメーションメールのシナリオ改善、UIのレイアウト変更、アップセル・クロスセルのルールなど。Shopifyは、公開されているAPIが多いため、AIによる判断だけでなくAPI通じた指示出しまで行える領域が広いため、技術的にも実現しやすい。
・ 黒瀬@StoreHero,Inc CEO(@jkurose777) / X
・ Shopify特化のグロース支援 StoreHero
・ 【過去回】 #79 米国リテール業界ではバズワード、”ゼロパーティデータ”ってなに?(Apple / Spotify)
生成AIが実務で取り入れられ、爆発的に普及する年になる。特に商品(モデル)写真、CS対応の2つは先進的な企業は多く取り入れていくだろう。一方で「人間的」であることの価値も見直され、使い分けが求められる。イメージ写真やキービジュアルなどは人間が創り上げたものであることが証明されるような仕組みを求められ、著作権の侵害などについてもより慎重な対応が求められる。そこを間違えて炎上してしまう企業アカウントも多発するだろう。
・ 河野 貴伸(@TakaKouno) / X
・ 【過去記事】2023年のShopifyはどう変わる?今おさえておきたい「Checkout Extensibility」とは
企業トレンド:店舗在庫の流動性を作るための取り組みが加速する
2023年は「小売企業がどのようにオンライン化を進めるか」に重点が置かれた議論が進んできました。Shopifyなどの普及によりオンラインでD2Cを実現することの難易度は大きく下がりました。オンラインストアは24時間営業の店舗で、EC在庫に年中無休で流動性を持たせることができます。次の課題は「店舗在庫の流動性を開店中だけでなく、どのようにして24時間でもたせられるのか?」となり、これを解決するインフラレベルのオムニチャネル化が進むと思います。特に在庫を物理的にかかえている百貨店やモールなどの施設で取り組みが盛んになりそうです。
マストレンド:SNS上でスマホの純正カメラによる投稿が増えていく
加工で美化された投稿より、純正カメラで撮影された写真のような「素」なコンテンツが増えていくと思います。SNSヒエラルキーの中で同じフォーマットのコンテンツが大量生成され、流石にそろそろマスも消費しきり、飽きてくるころではないかなと。表面的なコンテンツではなく、もっと(いい意味で)生々しいコンテンツが世の中に刺さり始め、あらゆるものを「素」で届ける流れが最も簡単な写真から始まり、他の領域に広がっていくと思います。加工と素、K-POPにおけるNewJeansのように新しい火は既存の炎の対角線上から生まれてくるはずです。
・ ゆず(@yuzushioh) / X
・ SaaS型小売基幹システム SQ、ブランドがモバイルアプリを構築・運用できる Appify