#30 クロックスが生き残った理由
多くのD2C商品のデザインや開発は実はアウトソースされていた?、ECでは提供できない体験を、店舗ビジネスのトレンド、インフルエンサーブランドを開発する特別部門UTA Venturesの内情
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
クロックスが生き残った理由
超有名フットウェアデザイナーのサリー・ベンベリーでさえクロックスからのオファーを受け入れるほど、今はクロックスはファッション業界ではホットなブランドになっていると『BoF』の記事で紹介されている。サリー・ベンベリーのコラボ商品は数ヶ月後に販売されるが、靴のInstagram投稿が既に6.5万いいねを超えている。元々は医者やナースなど常に立っている職業の人たちなどから好まれていたが、今ではAmazonのフットウェアカテゴリーでは最も売れていて、Z世代を調査するパイパーサンドラーでも人気ブランドランキングで8位にランクイン。2020年の売上は$1.3Bで、今年は60〜65%成長すると想定されている。もちろん人気商品はベーシックなクロックスだが、最近だとDiploやジャスティン・ビーバーなどとコラボしてサブカルや熱量の高いファンベースにアプローチできている。さらにFear of God、Alyx、Loeffler Randall、Bottega Veneta、Gucciなども似たような靴を作ったりしている。クロックスは2017年あたりから戦略を変えて、ナイキと同じように卸事業をより慎重に扱い、顧客へ直接販売するのにフォーカスし始めた。2017年以降、品揃いを50%減らして、ブランドをメイン商品に集中させた。そのフォーカスと定期的なコラボをすることによって、誰でも一瞬で分かるブランド・商品を提供できた。さらにダサい靴と言われているクロックスは完璧を嫌うZ世代と相性が良かったのも影響したのかもしれない。
多くのD2C商品のデザインや開発は実はアウトソースされていた?
ペットファーストの犬小屋をデザインするFable、キッチンウェアのGreat Jones、ベビーチェアのLaloなどは実は同じ会社が商品開発を行なっていた。その会社がDoris Devについて『The Strategist』の記事で紹介されている。Doris Devは、プロダクトデザイン、開発、素材のソーシング、製造などを担当する代理店であり、2017年から多くのVCやデザインエージェンシーなどからの紹介でD2Cブランドと提携している。D2C起業家の多くはマーケティングやブランディングが得意だが、製造やプロダクト開発のノウハウを持っているわけではない。プロダクトカテゴリーによっては製造設備を自社で行うには数億円かかるため、既にサプライチェーン企業とネットワークがあるDoris Devと組むのは合理的ではある。Doris Dev以外にもAwayやCarawayなどの商品開発を行なったBox Cleverも人気。
プロダクト開発などのアウトソーシング自体は昔から行われていることだが、今までは多くのエンドユーザーは自社で素材のソーシングから開発プロセスを細かくブランドの創業メンバーなどが理解していると勘違いしていたかもしれない。ただ、プロダクト開発が外注されていれば、実際にどれだけ創業者は自社のミッションを信じて、本当に信頼できるブランドを作れるのか疑いが生まれる可能性もある。例えばAwayの最初のスーツケースは他のスーツケースブランドが開発されていた施設が作っていた。今後はよりサプライチェーン周りを可視化する需要が生まれるかもしれない中で、ブランディングだけではなく、商品開発も厳しく見られるだろう。
Your Favorite Start-up Might Not Have Made That Thing It’s Selling Meet Doris Dev.
ECでは提供できない体験を、店舗ビジネスのトレンド
Lego GroupやDick's Sporting Goodsは購入以外の訪問理由を作る店舗コンセプトを作っている。2001年のToys "R" Usのマンハッタン店舗に20メートル弱の観覧車が設置されたように、昔から多くの店舗は体験型のリテールを試している。『WSJ』によると、今まではレストランや写真が映えるセットを用意してたが、今はより複雑な体験を提供している。Legoのニューヨーク店舗ではリアルのおもちゃとARを組み込んだ20分間の体験を提供している。Dick's Sporting Goodsの新しい店舗ではロッククライミングを提供したり、フィッティングルームにトレッドミルなどを用意して、アスレチックウェアを試せるプライベートスペースを用意している。それ以外にランニングスペース、ゴルフ用に場所、ヘルシーなドリンクなどが頼めるエリアなども準備している。よりユーザーが自己表現ができたり、特別扱いする体験を提供することによって、ブランドアフィニティが上がることをブランドが気付き始めている。
Retail’s Latest Lures Include Treadmills in the Fitting Rooms and Virtual Legos
インフルエンサーブランドを開発する特別部門UTA Venturesの内情
コーヒー好きの人気YouTuberのエマチェン・バレンが自社のコーヒーブランドを開発する際に、所属しているタレントエージェンシーUnited Talent Agencyの部門UTA Venturesと共同開発を行なった。UTA VenturesはUnited Talent AgencyのVC部門でインフルエンサー事業への出資とブランド開発の支援を行なっている。セレブのブランド開発で重要なのは「Brand Permission(ブランド許可)」があるかを調査すること。UTA Venturesはインフルエンサーのユーザーにアンケートやフォーカスグループなどを通してブランドを受け入れてくれるかを聞く。これはいわゆるブランド信頼と似たコンセプト。エマチェン・バレンの場合は動画で何回もコーヒー好きだと証言していて、コーヒーに対してのパッションが明らかだったからブランド許可をファンから得られた。合計でUTA Venturesは40事業ほど投資とメンタリングを行なってきたが、最近だとサブスクサービスと飲食系のプロダクトが人気だと『Business Insider』の記事で語る。
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