#39 目標はレストラン売上を50%に、名物シェフが目指すD2C事業
体験型リテールのエージェンシー「In Person」、アメリカの冷凍食品文化、サプライチェーンの問題、Shopifyはアプリ開発者を味方に、Amazon帝国に対抗しようとしている
『CEREAL TALK』は、米国の次世代ブランドや小売、ニューラグジュアリーにフォーカスしたメディアです。毎週月曜日の朝にニュースレターをお届けしています🥣 by 沼田 雄二朗(@Numauer), 宮武 徹郎(@tmiyatake1) and 草野 美木(@mikikusano)
🥣 Briefing
目標はレストラン売上を50%に、名物シェフが目指すD2C事業
Netflixの『アグリー・デリシャス』などに出演したことでも有名なシェフのデイビッド・チャンが経営するレストラン「Momofuku」は、コロナの影響で売上で一気に減ったことで、新しい事業展開を決意した。『Modern Retail』によると、レストランからクッキングブランドへとシフトすることを決めて、目標としてはレストラン以外の売上を全体の50%にすることだった。彼ら以外にも、CarboneやBubby's and Blue Stripesも自社のCPGプロダクトをローンチ。未だにコロナの影響を感じているレストランからすると、生き延びるためにはこのような進化が必要だった。Momofukuに関しては2020年秋にソースを販売していて、そこから調味料などを販売。当時は自社サイトのみで販売していたのが最近ホールフーズやターゲットでも販売が確定。さらに8月にローンチした麺は7万人のウェイトリストを達成して、ローンチして2日で完売。
レストラン企業からするとCPGは今までとは違う課題を解決しなければいけないことになる。良い見た目のパッケージや卸のネットワークを作らなければいけない。そんなレストランの商品を一般消費者に提供するGoldbellyなどは今年の5月時点で850社をオンボーディングしている。特にこれから人材不足でレストランスタッフの採用が難しくなっている中ではD2C事業に展開するのが重要になってくるかもしれない。
After a tumultuous two years, restaurants are refashioning themselves as DTC brands
体験型リテールのエージェンシー「In Person」
Warby Parker、Everlane、GlossierなどのPRを担当したPR会社のDerrisの創業者のジェシー・デリスが新しいエージェンシーを始めた。レストラン経営者のウィル・ギダラと一緒にフィジカルなリテール店舗やリテール体験の支援をするエージェンシー「In Person」をローンチ。結局オンライン戦略だとスケールできないD2Cブランドにとってリアル店舗戦略はかなり重要になってくる中、そこの体験作りを支援している会社が少なく、今までのリテール店舗は商品で違いを見せようとしたのをもっと体験にフォーカスするべきだと『Modern Retail』の取材で語っている。ただ、今後ピックアップなどすぐに出入りしたい顧客と体験を味わいたい顧客の両方を満足する店舗を作るのは課題になりそうだ。
DTC Briefing: Jesse Derris launches a new experiential retail agency
アメリカの冷凍食品文化
『2PM』では、アメリカの冷凍食品文化についてのストーリーを紹介している。1953年、Swanson社はサンクスギビングでの七面鳥の需要を高く見積りすぎたため、260トン分の七面鳥を冷凍していたのをSwanson従業員がその冷凍食品を活用して航空会社が提供する食事に活用してもらった。そこで生まれたのが「Swanson TV Dinner」。いわゆる冷凍食品を活用した、単価の低いディナーセット。それが1990年代まで続いたが、最近では冷凍食品業界が進化している。よりヘルシー、そして高クオリティの食材を活用したブランドが増えている。直近ではコーヒーブランドのCometeer、高級肉のButcherBox、冷凍スナックのSnow Daysなど、冷凍食品ブランドがかなり増えている。2018年から2020年にかけて冷凍食品をオンラインで頼む世帯が23%から42%まで成長し、冷凍商品の売上はその期間中に75%成長している。明らかにこの領域は最近伸びている。アメリカのD2Cブランドのトレンドを見ると、次の「空きスペース」を狙うブランドが多い。今まではトイレ、キッチン、寝室、クローゼット、冷蔵庫に入り込むブランドがあったが、直近では冷凍庫のスペースの取り合いになっている。
🎙 Podcast
This Week’s Topic: サプライチェーンの問題
今週のテーマは、「サプライチェーンの問題」。中国にある工場だけの問題ではなく、アメリカにも課題が山積み。年末のホリデーシーズンは、物不足はさらに悪化すると言われています。なぜこんなことが起きているのか、来年移行も続くと見られている中でアメリカのブランドや大手テック企業たちはどうしているのか話をしました。
✏️ View
Shopifyはアプリ開発者を味方に、Amazon帝国に対抗しようとしている
急成長しているShopifyを活用しているマーチャント数は170万社を超えている。そんな大きな顧客を抱えているプラットフォームがあるからこそ、Shopifyは多くのアプリ開発者を引き寄せられている。今ではShopifyのアプリストアは7,000以上のアプリを抱えている。Amazonの社内開発チームとは違って、Shopifyはこのアプリエコシステムを活用してEC市場を勝ち取ろうとしていると『Insider』は伝える。2019年、Shopify CEOのトビアス・リュトケが語ったあの名言は忘れられないだろう。ShopifyとAmazonの違いについて、「Amazonは帝国を作ろうとしているが、Shopifyは反乱軍に武器を提供している」。これを実現するためには、Shopifyは他社のアプリストアと開発者の時間と労力の奪い合いをしなければいけない。最も強いアプリストアはAppleだがShopifyは開発者を引き寄せるためにShopifyアプリの最初の$1M分の売上の手数料はゼロにして、$1M以上の売上を超えた場合は15%の手数料にすることを発表した。GoogleとAppleは$1M以下の開発者に対して15%の手数料、$1M以上の場合は30%なので、Shopifyの方が良い条件を提示している。
Editor's View
Shopifyは明らかにAmazonを意識した戦略を考えている。過去のOff Topicポッドキャストでも話したが、色んなSNSやGoogle検索などと提携してブランドのディスカバリー課題を解決したり、広告事業への展開を始めたり、自社のロジエコシステムを拡大している。この三つの領域はAmazonの得意分野でもある。特にAmazonや大手テック企業は独占禁止法に該当するかアメリカ政府からかなり注目を浴びている中で、自社で全てをコントロールする戦略は今後厳しいとShopifyはおそらく感じているからこそ、アプリ開発者と一緒にプラットフォームを拡大するようにしている。Shopifyの投資戦略などを見ても、AffirmやYotpoなどソフトウェア企業に投資する形で成長しようとしている。今後もShopifyはAmazonより分散型な手法で世界トップECプレイヤーを目指すはず。——宮武
Shopify is building an army of loyal app developers as it ramps up its battle against Amazon
📰 News
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