#71 なぜ広告ビジネスはショッピング機能を拡張するのか
今年のプライド月間、ブランドはどう動いた?、WalmartとRokuの提携、機内体験にD2Cブランド、ラグジュアリーの即時配達、Nike50周年で考えるカルチャーの重要性、スニーカー再販のコーチングプログラムを運営する若者たち
🥣 Briefing
なぜ広告ビジネスはショッピング機能を拡張するのか
AamazonのFire TV Stickなどで知られる動画配信サービスの端末機において、米国内に大きなシェアをもつ「Roku」が、小売大手Walmartと提携し、その場で商品の購入まで完了することのできる広告の試験運用を開始すると発表した。
動画の途中に流れるWalmart商品の広告を見て、それが気に入った視聴者はリモコンのボタンをひと押し。するとレジ画面に遷移し、Rokuに登録しておいた決済情報を用いて、その場で支払いを完了する事ができる。こうしたその場で簡単に購入までできる広告、通称ショッパブル広告は近年増加傾向にあり、Youtubeや、フードデリバリーのInstacartにおいても同様のショッパブル広告が展開予定だ。
同時に、これまで広告ビジネスで覇権を握っていたソーシャルメディアの動きも気になる。先日Shopifyが発表したアップデートにて、Twitterのプロフィールページに商品を表示できる機能が追加された。Shopifyの在庫情報との統合が可能で、ブランドはTwitterをいち販売チャネルとして運用する事ができる。TikTokやInstagramなどSNS各社がショッピング機能を拡充するなど、ソーシャルコマースの事例はここ数年枚挙にいとまがない。
これまで認知の入り口であった広告サービスが、商品の購入にまで手を伸ばしている背景には、IOSのアップデートにより購買行動の追跡が難しくなったこと、ソーシャルメディア各社が新たな資金源を模索していることなどなど、様々な都合と思惑が複雑に絡み合っているのだろう。今後広告出稿先がブランドの販売店舗として機能しだすとなると、Twitterの例のように在庫管理など裏側を支えるShopify系サービスの需要がいよいよ増しそうな予感がする。
Walmart, Roku partner to evolve shoppable streaming ads 'beyond the QR code'
今年のプライド月間、ブランドはどう動いた?
6月のプライド月間に合わせ、世界各地でLGBTQ+の権利や文化、コミュニティーへの支持を示す様々なイベントが行われた。業界問わず多くのブランドがLGBTQ+コミュニティを支援するためのチャリティー活動やカプセルコレクションを販売していると『WWD』は伝えている。
UGGは、LGBTQ+コミュニティの自殺防止に取り組む世界最大の非営利団体The Trevor Projectと提携し、125,000ドルの寄付を行うとともに、プライドにちなんだディテールを施したシグネチャーピースの限定カプセルをリリース。ライフスタイルブランドFossilも、限定カプセルを発売し、6月のコレクション売り上げのすべて寄付することを発表。化粧品メーカーのMorpheは、The Trevor Projectとコラボレーションし、プライドフラッグからインスピレーションを得た鮮やかな色合いのメイクアップコレクションを制作。SaksとRalph Laurenは、6月中、プライドキャンペーンやそれぞれのソーシャルメディアチャンネルで、LGBTQ+の歴史やコミュニティの著名人の活動、ストーリーに焦点を当てている。各ブランド限定コレクションの発表や寄付、SNS上での発信をメインに働きかけているイメージ。中でも印象的な動き方をしていたのは、音楽界のレジェンド且つLGBTQコミュニティの代弁者として積極的に活動してきたCher (シェール)とVersaceが共同で、限定カプセルコレクション「Chersace」を制作し、その収益のすべてをLGBTQ+の子どもや若者を支援する慈善団体Gender Spectrumのために寄付するというコラボレーション×限定カプセルコレクション×寄付という内容。
どのブランドも去年と比較すると活発に動いており、ブランドがLGBTQ+と向き合い続けて、どう表現するのかを求められる期待値がこの先も高まっていくかもしれない。
Brands Celebrate Pride Month 2022: Peloton, Saks, Ralph Lauren, Ugg
🎙 Podcast
WalmartとRokuの提携、機内のアメニティ、ラグジュアリーの即時配達、Nike50周年で考えるカルチャーの重要性
今回は、Nikeにとってカルチャーの重要性についてやウォルマートとRokuの提携、増える旅行に機内体験からリーチするD2Cブランド、LVMHが推すラグジュアリーブランドの即時配達サービスなど話しをしました!いつもニュースレターのキュレーションなどもしている編集チームのモチヅキくんも含めて4人で初収録でした🎙!
追記
以前ポッドキャストにも出演していただいたMiho Tabaruさんから前回のpodcastで取り上げた内容について追加情報をいただきましたので、補足として追記させていただきます。
TOSHIは2017年ローンチで既にNYでも配送を行っており、CHANELを含む30ブランド以上と提携
PANGAIAはもともと素材を他企業に販売するBtoBビジネスを目指しており、サンプル的な扱いで自社ブランドを始めたところ、そちらの人気が出て今にいたる
Mihoさん、ありがとうございました!
✏️ View
スニーカー再販のコーチングプログラムを運営する若者たち
スニーカーコミュニティについて、Discord活用している話やスニーカーコミュニティを運営するSoleSavyなどCEREAL TALKではいくかご紹介してきましたが、今回はコーチングプログラムを運営している若者についての『MEL』の記事を紹介したいと思います。彼らは、スニーカーのリリース情報をいち早く提供したりするいわゆるDiscordコミュニティの“cook groups”と言われるものと違い、売上を伸ばすためのコーチングを行う。プログラムに参加をすると週に5回グループコール、週に1回の1on1の通話、40のアクションプランによってスケールをサポートするという。受講者の平均年齢は18歳から25歳で100人から申し込みがあった。3ヶ月以内に月額2,000ドルを達成しなかった場合、達成するまで無料でサポートをする。
Editor's View
記事の中で紹介されているプログラム運営をしている方は18歳や20代前半の若者たち。中でも18歳のデイジン・パークさんは、5年前(つまり13歳!)に欲しかったスニーカーを手に入れるためにディスカウントショップで見つけた靴をeBayで転売したのが最初のきっかけだったそう。しかし大学生になった彼は、寮からビジネスが以前のようにすることができなくなり、再販プログラムをスタートしたというのもすごいですよね。——草野
Sneakerhead U: The Guys Who Want to Be Your Sneaker Reselling Coach